井上ひさしの代表作〜ありすぎて「代表作」の3文字を使いづらいなぁ
と逡巡しながらも、もう書いちゃったし、
井上戯曲上演のために作られたこまつ座の旗揚げ演目でもあるから
そのまま行きますが〜のひとつ『頭痛肩こり樋口一葉』を新宿で観た。
新宿といえば紀伊國屋ホール、その弟分の紀伊國屋サザンシアターや
〜ん? 〝劇場〟は男性名詞か女性名詞かを知らずに、
つい弟分としたけれど
、
その正誤の前にイマドキは男女のどちらかに偏った表現はペケか?!
とほんのちょっぴりビビったりもする〜
紀伊國屋ホール斜め裏手のシアタートップスなど
とにかく芝居小屋が少なくない街の、恐らく一番知られていないだろう
「新宿歌舞伎町能舞台」が会場。
現在の場所(マンションの2階)に移ってでも約40年、
「中島新宿能舞台」として産声をあげたのは1941年と歴史があり、
Smappa!Groupが購入し「新宿歌舞伎町能舞台」に改名したのは2022年。
重要無形文化財総合指定保持者で観世流能楽師の中島志津夫による
謡・仕舞の稽古をはじめとした伝統芸能はもちろんのこと、
ホスト歌会やトークイベントなどが幅広く使われている、らしい。
前段が長くなったが、そんな場所でドナルド・パッカーン公演
『頭痛肩こり樋口一葉』は上演された。
(12/11〜14、川口典成演出、河崎純音楽)
樋口一葉から思い出されるのは、昔いた劇団が上演した舞台
『花になりて散らばや』。
文化庁主催の戯曲賞で入選した松澤佳子の『夢見る言葉』を改題して、
劇団東演が掛けた小屋は、それこそ紀伊國屋ホールだった。
占い師・久佐賀義高から金策を試みるどたばたを描いた舞台。
『頭痛〜』にも久佐賀(くさか)とのエピソードは登場するが、
その初演は1984年で奇しくも紀伊國屋ホール。
主演の一葉〜戯曲では本名の夏子とされていて、
何故ならまだ作家デビュー前から亡くなった新盆までが描かれるから
〜は、渡辺美佐子だった。
その後、香野百合子、日下由美、原田美枝子、有森也実らが演じている。
演出は木村光一。こまつ座の旗揚げと上述したが、
10周年記念(1994年。夏子に宮崎淑子)、
100回記念(2013年。同・小泉今日子、演出は栗山民也)と
節目節目にレパートリーされた演目。
名作ゆえ他のプロダクションも多数上演していて、
例えば今回、一葉の母・多喜を好演した内田里美は過去に二度、
一葉の妹役・邦子で板に立っていたりする。
ドナルドの邦子は金井由妃。
民藝所属の若手ながら天下の〝文俳民〟の一角〜12日に発表された
第60回紀伊國屋演劇賞・個人賞を同劇団の看板
樫山文枝が受賞したばかりだが〜金井も確かな口跡と軽やかな演技で
舞台をリズム良く運んでいた。
偶然だが、樫山の受賞は金井の初日を祝うタイミングになった。
蛇足ながら〝文俳民〟は新劇の老舗3劇団のこと。
文学座、俳優座、民藝で、昨年の紀伊國屋個人賞は、
俳優座代表の岩崎加根子が『被爆樹巡礼』『犬やねこが消えた』の語り手、
『慟哭のリア』の室重セイで受賞している。
その俳優座研究所に学んだ時期もある斉藤沙紀の籍は新派。
夏子に波乃久里子、鑛を水谷八重子での新橋演舞場は2000年。
斉藤は樋口家と親しい中野八重。
嫁いで一時裕福になるが、やがて身をやつす役柄。
着物さばきが堂にいっている。さすが新派!
中野と同じく盆に樋口家を訪れるのが稲葉鑛(こう)。
多喜が乳母として育てた旗本の娘で、彼女を母と慕う。
演じたのは流山児★事務所の春はるか。
「遅れてきた大型新人」と称されてから5〜6年になる。
この舞台では演技もさることながらパワフルな歌唱が光った!
そう、ドナルド・パッカーンの『頭痛肩こり〜』は
能舞台にミュージシャン河崎純(コントラバス)、
熊坂路得子(アコーディオン)が乗り、ほぼ音楽劇といって良い創り。
独創的な音楽と井上ひさしの言葉が化学変化を起こしオルタナティブな、
かつ横溢なグルーヴ感の〝劇〟になり、
その意味では〝激〟ともいえる2時間20分は長さを全く感じなかった。
そんな作品のタイトルロール一葉(夏子)には辻村優子。
才気煥発さと負けん気の一葉に似た果敢な行動力で、
女優として過去に伊藤野枝(劇団朋友『残の島』)も演じ、
ファシリテーターなども。
その存在感はいつか「お札」になるかもしれない。
・・・実は『頭痛肩こり〜』をみた前日には津田梅子の芝居を観た。
が、それはまた別の話になる。

