劇作プレゼンの様子をお届けするブログ第2回の主役は、主宰の田中寛人さんです。
普段書く場合も、プロットをきちっと書いてから執筆に入るという田中氏。その発表内容は如何に……。

 

時間割
1時間目 『消えない黒板』
2時間目 遺すか、遺さないか
3時間目 良かった点
4時間目 先生からの相談
5時間目 生徒からの質問
6時間目 フリーディスカッション

 

* * *

1時間目 『消えない黒板』

以下、田中氏が取材から抽出したモチーフのプレゼンです。

 

  • 数馬分校に行って、最初に見て一番印象に残った、黒板の話を書こうと思ってる。
  • 当時の黒板が遺っているのがすごいと思ったのと同時に、消したらどうなるんだろう、誰が怒るんだろう。黒板を消したら、管理人さんもスッと消えるのでは?
  • そこから考えたのは、誰か消しに来たんだけど、また次の日黒板が戻ってて、何度消しに来ても戻ってるっていう、そういう黒板を廻る話にしたいなと。
  • そうすることで、消えるものの意味が分かるのではないかと。
  • だから、消えない黒板をモチーフに廃校を守ろうとする人と取り壊そうとする人の対立軸で考えていければと。

 

こちらが、田中さんがインスピレーションを受けた黒板です。

 

 

数馬分校にはもう一つ黒板があるのですが、そちらは来場者が自由に書いてよいもので、現在まで変化し続けています。一方この黒板は、廃校になるまさにその瞬間の、別れの瞬間が記された黒板で、書いたり消したりしてはいけないことになっています。管理人さんと共に、数馬分校を見守ってきた黒板です。
ここから物語が始まるのですね。

 

* * *

2時間目 遺すか、遺さないか

  • 登場人物は、管理人の元教え子の女1。その同級生の男。男の妹の女2(ただし亡くなっている)。そして元管理人(亡くなっている)。
  • 女1は元管理人の娘で廃校を取り壊そうとして、男は同級生で保存活動をしようとしている。議論というか話し合いをして、途中で死んだ元管理人や女2が出てくる。そんなような構想で考えている。
  • なので、場所は廃校の教室。
  • 大切な黒板が消されていて、「誰が消しているんだろう」ということで、一組の男女がずっと見張っている。そこに元管理人さんと死んじゃってる女2が出てきて、黒板を消していたのは実は――そんなふうな話。
  • ベタな幽霊モノでいこうと思ってて、15分だから分かりやすい構成の方がいいかと。
  • 何を書きたいかと言うと、檜原の分校を見た後と、虎の門で撮り壊れている風景を見た後思ったのが、数馬分校は管理人さんが頑張っているから記念館で残っているけど、正直意味があるのかなと思った。
  • もちろん古い遺跡は世の中にたくさんあって、観光名所になってたりするけど、それって誰かが意図的に保存運動している場合もあるけど、ただ遺っているだけのものもある。で、本当の遺跡ってただそこに残っちゃったものだけなんじゃないかなと思って。
  • 人が遺そうと思って、最近よく聞くレガシーを遺しましょうって言ってるけど、なんか違うんじゃいないかなって。そこを明らかにしたい。

 

写真は、都内の廃墟を巡っていたときに撮ったものです。

 

 

遺すことへの違和感。田中さんはそこを表現しようと画策しているようです。
道徳の授業ではないので、取材をもとに必ず肯定的な主題を持たなくてはならない、なんてことはないですからね。
田中さんは取材した内容を、なるべくそのまま戯曲にしようと画策しているようです。
普段プロットを仕上げてから書くという姿勢からも見える通り、とても丁寧なプレゼンでした。話を聞いてるだけで、物語が浮かんでくるような内容ですごいと思いました(小並感)。

 

* * *

3時間目 良かった点

※ここからは、クリティカルレスポンス(戯曲を批評する時に用いる手法。戯曲に限らず、あらゆる企画に応用可能。みんなにやさしいシステムなのでもっと広まるべき)による田中さん(先生)とその他の参加作家(生徒)による意見交換の時間です。

 

菊池 取材したことが生きていてすごいなと思いました。黒板の文字が戻ってくるという怖さと、主題のつながりが、レガシーの話ともつながって。


関野 誰しも、あの黒板の文字を消したらどうなるんだろうって思ったと思う。(一同思った思ったという共感、笑いが溢れました)。そこから作品になるのすごいと思う。


田中 消そうと思うけど消せない人間のひよりっぷりがすごいなぁって。


関野 あと、綺麗に遺そうとする人と、壊そうとする人と、それぞれ意志があって、のんべんだらりとした人が居なくていいなと思いました。


早川 夜通し黒板を見張るというのが、心惹かれる(一同笑い)。寝ずの番とか。監視するっていうか。そういうの個人的に好き。


Kaivz みんなが口にしない、「本当に遺す意味あるの?」って突っ込んで書くのがいい。


関野 田中さんの意地の悪さが出ていい(一同笑い)。


田中 奥多摩って廃墟あるんだけど、お金ないから壊せないものが多いだよね。それはそれで遺ってしまったものなんだけど、数馬は立て壊すだろうなと思ってて。遺す意義が、管理人は分かってるけど周りからは分からないなと。

 

* * *

4時間目 先生からの相談

田中 相談は二つあって。一つ目は、黒板をモチーフにしてるんですけど、黒板じゃなくてもいけると思いますか? 印象的なものが黒板であっただけで、消える消えないで言えば黒板である必要はないのかなと。


早川 黒板である必要はないと思います。廃校が決まった年の最後の卒業式とか、黒板にかかれていたあの文字がインパクト強かっただけで、ノートとかでも、いけると思いますけどね。木に彫ったのとか。


関野 ぼくは結構黒板気に入ってて、変える必要ないんじゃないかと。元の状態に戻るって言うのが、舞台上で動作するとき楽そう。ビジュアル的に分かりやすいし。黒板のままでいいのでは? そこからインスピレーション来たので、引っ張れるだけ引っ張った方がいいと。


田中 なるほど。じゃあ追加で、黒板でいく場合、舞台上に黒板があった方がいいかな?


菊池 もちろんあった方がいいですね。


早川 見せ方かなー……。あったらあったでビジュアルが良さそう。


田中 二つ目の相談なんだけど、登場人物で、監視する男女に、恋愛関係を絡めた方がいいだろうか。


菊池 初めはあるのかなと思ったけど、無い方がいいんじゃないかな。


早川 わかる。尺が長いなら、夜だしおもしろくなるかなって思うけど、15分だと絞った方がいいかなって。


関野 恋愛があると、フォーカスが廃校に向かないと思う。


早川 人はそれだけ恋愛に関心あるからね。絡めるとしたら、セリフにするんじゃなくて、芝居の中で匂わせる感じかな。

 

* * *

5時間目 生徒からの質問

関野 死者と生者は、邂逅するんですか?
 

田中 舞台上には居るけど、話し合いはさせない。お互い気付かないでいこうと。どっちの話をメインにするかは悩んでいる。どっちかが話してて、どっちはか見てるだけって関係にしたい。

 

* * *

6時間目 フリーディスカッション

菊池 では、フリーで何か話をしたい方がいれば。


全員 …………


(無言からの笑い)


早川 いや、プレゼンがかっちりしてるから、安心しちゃってて(一同笑い)


田中 してる(笑)?


関野 してますよ(笑)。


早川 ストーリーが見えますよ。ビジョンが見えるから。えーっと、元管理人は、他の登場人物のみんなのこと知ってる人?


田中 そうです。みんな知り合いなんですよね。


関野 レガシーを人の意思で遺す意味あるの?ってのが主題かと思うんですが、田中さんは意味があると思ってるんですか?


田中 意味ないと思ってます。人の手で遺すのは限界がある。


早川 城とかは?


田中 観光名所として成り立たせるために残しているとすれば、アリといえばアリなんだけど、それはもうレガシーじゃないよね。中にエレベーターがあったりとか。そういうことをしていない松本城とか姫路城はレガシーかもしれないけど。


早川 お城の補修とかは?


田中 お金の為ですよねっていう。


菊池 レガシーからは遠ざかってるっていう。


関野 ぼくはレガシーを人の意思で遺すことに意味があると思ってて。映画好きなんですけど、昔の機材で作った昔のインディーズ映画を、友達が焼き直してたりするんですけど、そういうことには意味はあるかなと。


田中 自分もよくよく考えたら、絶版の本を探すとき、無いはよくある。そう考えると、なくなるデメリットはあるのかもしれない。主題について、もうちょっと考えないといけない。

 

 

田中さんへのクリティカルレスポンスは、以上で終わりました。
書いてる本人が気になっていること、お客さんとして聞いて気になったところ、そういう部分をダイレクトに訊けて、なおかつ雰囲気が悪くならないという、クリポまじ最高って感じです(ウェイ感)。
このプレゼンはあくまで当時の草案で、現在はより深く、姿が変わっているはずです。いったいどのような戯曲が出来上がるのか、今から楽しみです。

 

放課後 ドラマトゥルク早川貴久からのメッセージ

さすがコミュニケのボス田中寛人。この菊池くんのレポートからもわかっていただいと思いますが、誰も非のうちどころのない素晴らしいプレゼンでした。
田中さんの戯曲って、田中さんの見た目の印象や実際会ってお話ししてその人柄が分かった上で言いますけど、彼が書いたと思えないくらい綺麗な本なんです。
関野くんも言ってますが、田中さんって心の中の悪いところが見え隠れするんですよ。僕としては、それが田中さんの一番の魅力だと思ってるんです(実際、田中さんは素晴らしい悪いエピソードを数多くお持ちです)。だから、このレポートでせっかく残ったものを批判する姿勢とかとっても田中さんらしいんですよね。

 

この間のリーディングでも田中さんの戯曲をみんなで読んだんですが、そのときもやっぱり美しい本でした。でも、その中に垣間見える悪さもまたあって、僕としては田中さんの悪いところをもっと前面に押し出していってほしいなと思っています。今回のコミュニケは5人の作家が異なる作風で作品を書いていますが、その中で一番悪くなさそうな人が一番意地の悪い本を書くことを僕はとても期待しています。そうじゃなくても、作家集団のボスですから絶対面白い戯曲を提供してくれるはずです。乞うご期待です!

 

次回は戯曲プレゼンの第3回・菊池祐児の戯曲プレゼン風景をお届けします。
引き続きコミュニケをどうぞよろしくお願いいたします。

 

菊池 祐児