今回から各作家の劇作のプレゼンテーション風景をお届けします。

 

コミュニケ#2で作家たちは取材を通して短編を書くわけですが、
・取材を通して得たインスピレーションは何か?
・それを元にどんな作品を書こうとしてるのか?
そんなことを書く前に作家同士フィードバックしよう!というのがこのプレゼンの目的です。
もちろんプレゼン通りに戯曲を書くかは作家次第です!

 

 

そんなわけで第1回は「演劇界の狂犬」こと関野 翔太のプレゼンです。

 

目次
岩松了風『紙風船』
どんな登場人物を入れればオチがつく?
「オポチュニティ=機会」というズレ

 

* * *

モチーフは『紙風船』のような岩松了

まず関野くんが発表した作品モチーフとプレゼン風景をどうぞ。

 

作品モチーフ
・収入格差がある共働きの夫婦
・男も女も自身を喪失している
・湿り気のあるディスコミュニケーション
・フォーカスがそれぞれに当たっていない夫婦
・明るくない未来の話
・岸田國士の『紙風船』のような岩松了 
・肯定/否定/別の話題 なら別の話題で連綿と続いていくような芝居

 

関野くんのプレゼンより
オーディションの台本をそのまま行こうと思ってます。
イメージ的には岩松了が書いた風『紙風船』。
普段は質問に対して的確に答える台本が多いんですけど、それをズラして話題がずっと連綿と続いていく感じにしたい。この人と喋ってるのに急にぽっと別のことを言うっていう。
主人公は「男=職なし/女=そこそこのキャリア」にしようかなと考えてます。
廃墟に行ったんですけど、舞台は普通に1LDKです(作家一同、爆笑)
それで、この作品で何をやりたいかということなんですけど、最近「人生の不可逆性」について考えていて。平野啓一郎の『マチネの終わりに』っていう小説があって、過去は変えられる/変わってしまうという主題で書かれてるんですけど、それが凄く良いなと。
その小説の中のエピソードで、昔遊んでいた庭に石があって、もともとその石が好きだったんだけどおばあちゃんが頭をぶつけて死んで、それからおばあちゃんを殺した石にしか見えなくなるというのがあって。
そのエピソードはネガティブな方向に思い出が変わっていく/もうそういう意思にしか見えなくなるってエピソードなんだけど、過去の話がポジティブな方向に変わって、紙風船っぽくなったらいいなと思って。
僕自身がここ数年正社員として働き始めて、それでも演劇やってることとか、俳優やってたこととか、未来とか過去とかを考えていて、そういうところから作れれば良いなと思っています。

 

出ました。オーディション台本そのまま行く宣言。
しかも舞台は廃校でも廃墟でもなく1LDK。
関野くんの狂犬ぶりが遺憾無く発揮されたプレゼンテーションでした。

 

なおオーディション用に書いた台本はこちらです↓
https://drive.google.com/open?id=1Xr2ba7xHKFmTCARckPfGYFs67X8yCE2N

 

ところで関野くんは狂犬ですが、書かれた戯曲は日常会話の精緻な積み重ねで成り立っています。
これは個人的な見解なんですけど、彼の戯曲の醍醐味って、彼自身の人生の歩みがそのままセリフになっていく所だと思うんですね。だから書けば書くほど深みが増していく。
今回の試みも現在進行形の彼の生き様が現れた戯曲に仕上がると思います。
なんてったって就職したからね。

 

作家たちの反応
田中  関野くんの今のリアルが出ていてどんな作品になるか楽しみ。
kaivz ポジティブな終わり方で観終わったあと前向きに劇場を出れそう。
早川  関野くんらしい。主題とか関係なく杉並区の1LDK選んでくる感じが(笑)。書きたいことがあって凄く良い。
菊池  過去を変えられるっていう考え方がモチーフとして良いなって思いました。

 

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作者の悩み「どんな登場人物を入れればオチがつく?

次にプレゼン後の作家たちからのフィードバックです。
まずは関野くんから劇作する上で抱えている悩みを教えてもらいました。

 

関野 オーディション台本にもうひとりキャラクターを入れたいんですよ。
三十代か二十代後半のカップルの話になるんですけど、どんなキャラクターを入れればハリが出るかなって。
あとオチが難しいなと思ってるんですよ。『紙風船』って最後に紙風船を見つけて「子供いいな。家族を作ろうか」って終わり方だと僕は認識してるんですけど、どんなキャラクターを出せばハリが出て、オチがつけられるか。

 

田中 メインの主軸に置きたい人と近しい関係か、逆にかけ離れた人が出てくるか。どっちかかな。
『紙風船』って恋愛結婚した女学生と先生の話で、よく言われる倦怠期の夫婦の話じゃない。当時は恋愛結婚が珍しい時代だから、実はすごく新しい戯曲だった。でもじゃあなんで倦怠期の夫婦に間違われるかと言えば、登場人物が二人で対比する人物がいないから、現代人から見ると新しい話だと分からない。そこを比較できるとすごく面白くなるんじゃないかな。

 

菊池 ペットとかいいかなと思ったんですけど。猫、犬、目的が果たせるならなんでも。カップルの間に変なものが一匹いたら相対的に見えるんじゃないかなって。

 

田中 比較の対象になれば人である必要はないと思う。

 

早川 田中さんの言った通り近しい人か遠い人だと思う。近しい人かな。オーディション台本を読んだ時に関野くんの話なのかな?って思えて。彼女の存在とか、そこに近い何かを出したら良い。責任は負えないけど(笑)

 

kaivz 二つじゃないと成立しないもの。夫婦という枠組みが固定されているので、そうじゃない形で二つじゃないと成立しないものを1つ間に挟むと良い戯曲になるのかな。

 

菊池 平田オリザさんが言ってましたけど、人間を描くより社会を描いた方が良い。社会を描くと必然的に人間が浮き彫りになるから。そういう視点で描くのもアリかなって思いました。

 

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「オポチュニティ=機会」というズレ

田中 オーディション台本を読んで思ったんだけど、この男女ってどのくらいの社会的ステータス?

 

関野 割と高いです。女性はリクルート新卒で入ったぐらい。

 

田中 いままでの関野くんの戯曲ってだいたい家賃2万の風呂なしアパートに住んでるイメージがあったんだけど、これを読んだら扇風機とか出てくるけど家賃15万くらいのマンションに住んでそうだなって。そこにも関野くんの劇作の変化を感じる(笑)

 

関野 金銭感化で変わっていく(笑)

 

早川 これいつから書こうと思った?

 

関野 メモ帳に書いていてときどき見返すんですけど、その中に扇風機が壊れた男の話があって、1年ちょっと前に書いたんですよ。

 

田中 温めてたんだ。

 

早川 英会話教室の仕事を始めたくらい?

 

田中 だからオポチュニティなんだ。

 

関野 オポチュニティは英会話教室に入る前。急に変な英単語を話すのが面白そうだなと思って。

 

田中 オポチュニティって言葉のチョイスが凄く良いよね。日本人からしたら「機会」に思えないもん。ゴキ○リ=コックローチくらい言葉の響きにズレがある。

 

早川 良い感じに卑猥だよね、オポチュニティ。言わせたいよね、女の子に(笑)

 

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プレゼン風景は以上です。
檜原村の廃校を見学して都内の1LDKを書こうとする関野くん。
いったいどんな戯曲ができるのでしょうか?

 

最後のドラマトゥルク早川貴久からのフィードバックをお届けします。

 

ドラマトゥルク早川貴久のワンポイント・アドバイス
アドバイスを求められたのですが、プレゼンの時にちゃんとやっているつもりだったので、改めて思ったことを書かせてもらいます。

 

取材したこととは関係ない話を書く関野くんです。その潔さとか最高なんですけど、でも実は取材したからこそ、これを書いてきたんじゃないかなと思ってます。取材という行為から自分の興味のあるものないものをそれぞれの作家が再認識したはずなので。
それを踏まえて、こんなこというのは野暮とわかっていながらも、どこかで今回の取材ネタがピタリとはまる展開だったら巧みだなぁーと思います。また予想を裏切って欲しいなっていう。
ただ、関野くんのことなので、関係なく突っ走ると思います。そして、彼の本が今までの関野くんらしくないものだと感じながらも、すごく関野くんらしいものなので単純に期待してます。そして期待に応えてくれる本になると思っていますので、皆さんもお楽しみに。

 

次回は戯曲プレゼンの第2回・田中寛人の戯曲プレゼン風景をお届けします。
引き続きコミュニケをどうぞよろしくお願いいたします。

 

田中 寛人