翌日、季節も真冬の12月に入っていた。とある小さな町の古びた小さな家で、暖炉のある部屋で静かに朝食を摂っている母子がいた。この冬の寒さの中ではあるが、暖炉が焚かれてあるおかげで、部屋の中は温かい。
→Set→古めかしい小さな家、そして、暖炉など家具類
→Costume-Design→真冬の寒さをしのぐ厚手の暗色系の服
古めかしい焦げ茶色の木製のテーブルにシチューのようなスープが出され、席に着いてスプーンで食べている中学生の息子がいる。それに対面するように、母が席に着き、新聞の朝刊を読んでいた。昨日の公開処刑の死後写真が掲載されているのを見て、
母:「まあ、世の中も変わってしまったもんだね。四半世紀も罪を放置しているなんて。とんでもない国だね、この国は…」
息子:「なぜもっと早く報道しなかったの?被害者の苦しみも、もっと軽減されていたのに…」
母:「それが問題よ。メディアが役割を果たしていない。この残虐な日本国家の既読者らが情報統制もしている。それに乗じて、既読者全般が甘い汁を吸い、堕落した生活を送っていた。罪を見て見ぬふりを。それで私腹を肥やしていた」
そんな会話をしながら、見も縮こまる寒さの中で、温かいスープを飲んでいた。この冬の時期はじっくりコトコト煮込んだスープが絶妙に美味しい。
そんな話をよそに、母が息子に学校での生活を聞き出していた。
母:「学校はどう?楽しい?」
息子:「まあまあかな。勉強が苦手で…」
母:「そういうところもあの人(亡くなった父)に似ているわ。そっくり」
スープを飲み終え、手元にあったコップに入ったお茶を飲むと、息子はふうっと大きく息を吐いた。まだ亡くなった父のことを思っている。
母:「お皿は自分で片付けなさい」
息子:「分かってる」
そう言って、息子は席を立ち、皿を流しへ持って行くと、それからは洗面台へ行って歯を磨いた。母は夫が亡くなってから、一家の大黒柱としての自覚が芽生え、何かと息子に対して躾をしてきた。朝刊を折り畳み、温かいスープを飲みながら、窓の外の景色を見ていた。小雪が舞っている。母が部屋の角に置かれた、これも古い小さなテレビをつけてみた。そこには朝の報道番組が流れていて、刻々とニュースを伝えている。
キャスター:「ホワイトクリスマスなんていう言葉もありますが、そうなってくると、何だか幻想的でロマンティックですね」
キャスター:「ドイツにはクリスマスマーケットがあり、ホットワインが提供されるそうですよ」
キャスター:「ヨーロッパのほうではクリスマス休暇がありますからね」
そうした報道を受けて、母はゆっくりとスープを堪能した。「なぜあなたがたは報道しなかった?よくそんな顔で出られるな」とでも言いたげに。
そこに歯磨きをしながら、中学生の息子が何かを言う。
息子:「母さん。今度、マカ叔父さんの家に行かない?」
母:「どうして?」
息子:「いつも新年は僕の家で親戚を集めて祝う。でも、父さんが亡くなった。来年からは、たまには親戚の家にお邪魔するのもいいかなって。家族が一人減った分、親戚とのつながりも今後は大切になってくる」
そう言った息子を、母は頼もしく思った。もうこんなにも成長しているのかと母は感じていた。