パタヤの女44話(完結)

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もう一度仕切り直しを

しようと思い

彼女に話しかけようとした。

 

しかしまさにその時

彼女がこうまくしたてた。

 

「ペーバー ネ!」

 

物凄い形相でだ。

 

私は驚いて引いてしまった。

そして固まったまま彼女を見ていた。

 

するとどうだろう

彼女が体を向き直り

 

私の正面から

さらにたたみかけてきた。

 

「ペーバー ネ!」

 

またも物凄い形相で

もう一度こう言ってきた。

 

彼女はかなり

興奮しているようであった。

 

ここで言う興奮というのは

頭に血が上っているという意味でだ。

 

私は少し冷静になって

「ポー、そんなに怒ってちゃ

ペーバー出来ないよ。」

そう返事した。

 

当然であろう。

 

こちらが謝って

仕切り直ししようとしている矢先に

 

「私を買うんだよね!」

なんて威圧をかけられて

 

誰が「ハイそうです。」

「買います。」

なんて答えるんだ・・・。

 

少し腹が立ったのだが

やはり悪いのは自分だと思い、

 

「ポー落ち着いて。」

そうなだめすかしてみた。

 

彼女達は基本 

自分自身を売っている。

自分自身が商品である。

 

なので自分を買ってもらって

始めて本来の収入が得られる。

 

その為に私達に接客する

あるいは媚びを売る。

 

だが最終的な目的は

やはりそこにあるのであろう。

 

当たり前だが、そこに有るのは

通常の恋愛感情では無い。

 

例えばデパートの売場で

何かの拍子に

店員を不機嫌にさせてしまい、

 

それでも

 

「あなた これ、買うんでしょう!」

 

なんて、鬼のような形相で言われたら

いくら気に入った物でも

 

当然の事ながら 

誰も買わないであろう。

 

結局、人が金を出すのには

その時に気持ちが伴わなければ

行動に移さないであろう。

 

それはこのGOGOバーでも

しかりだ。

 

キレたまま

「私を買え!」

 

なんて言われても

とても気持ちがついていかない。

 

おまけにその原因を作った

ロンを連れてきたのはポーである。

 

そこで私はもう一度

仕切り直しをしたかったのだ。

 

だが、彼女は私をにらんだまま

私の「OK」の返事を待っている。

 

やるせなかった・・・・。

 

初めて出会った時

私に手を差し伸ばし

 

微笑みながら挨拶してきた

あの時の彼女は

どこへ行ってしまったんだ。

 

今私を睨みつけてるレディは

その時のビーナスのような彼女では無く

全くの別人のように感じた。

 

タイレディはキレルと

まるで人相が変わるのだ。

 

もう酔いからも恋愛ごっこからも

全て完全に醒めてしまった。

 

「帰る!」「チェックだ!」

 

私は怒気を含んだ言葉で

そう彼女に言い返した。

 

ポーもその意味を理解したらしく

「バン!」という感じで席を立ちあがり

踵を返し再び奥に行ってしまった。

 

その後ろ姿を

何とも言えない気持ちで見送った。

 

ステージでは大音響の中

レディ達が相変わらず

艶めかしいダンスを繰り広げていた。

 

だが、その時の私の心の中は

誰もいなくなったステージのように

 

ひっそりと

静まり返ってしまっていた。 

 

彼女にはもう2度と

会う事はないであろう。

 

チェックを済ませ

私は静かに席を立ち

 

そして出口へと向かった・・・・。(完結)

 

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