『サード』 (1978)東陽一監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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ATG(日本アート・シアター・ギルド)配給の作品。ATGと言えば、前期には非商業主義的な芸術作品を多く手がけたが、評論家からは高い評価を得ながら興行的には失敗する作品もあり、社長が交代した後期には若手監督を起用して青春映画や娯楽作品の良作を生み出した。この作品は、社長が交代する前の作品。脚本は寺山修司。

 

主役の二人、永島敏行と森下愛子共に映画出演二作目であり、初主演(永島の映画デビュー作は『ドカベン』、森下愛子の映画デビュー作は『地獄の天使 紅い爆音』)。実に初々しいが、二人とも堂々とした演技。特に、売春をする女子高校生「新聞部」役の森下愛子がいい。前半の1/3は永島敏行「サード」の少年院での生活が描かれ、中間の1/3で時間が引き戻され、なぜ少年院に入ることになったかの物語、そして最後の1/3でまた少年院の描写に戻る構成。森下愛子はその中間部分にしか出てこないのだが、実に印象的だった。なんとなく、ドキュメンタリーを見ているようなナチュラル感があった。

 

登場人物の彼らはニックネームで呼ばれている。「サード」は野球部の三塁手だからという想像は容易にできるが、「IIB」(吉田次昭)はなぜかと言えば数学IIBが得意ということから来ていることを後で知った。また「新聞部」と共に売春をする「テニス部」の志方亜紀子は『Wの悲劇』で、オーディション中に流産騒ぎを起こす君子(と言っても誰も分からないだろうが)。

 

「サード」が度々見る夢の中で、彼がロングヒットを打って、サードを回ってホームに向かうとホームベースがなく、仕方なくそのまま走り続けるという情景がある。将来が見えないながらも、走り続けるしかないという不安まじりの青春の躍動感がうまく表現されている。現実のシーンでも走るシーンが多く、前を見据えてきれいなフォームで疾走する「サード」が鮮烈なイメージを作品に与えている。今まで観た彼の作品では、『遠雷』(これもATG配給)が一番彼らしくていい演技だったが、初主演でこの存在感はさぞかし注目されたことだろうと思う。

 

疾走する青春映画。必見。特に森下愛子ファンは絶対。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『サード』予告編

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