『息子』 (1991) 山田洋次監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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東京で定職に就くことなく生活を送る哲夫。妻に先立たれてから岩手に一人暮らしをする父・昭男は、彼女の一周忌に哲夫に帰省するように告げる。そして岩手に帰った哲夫だったが、兄弟や親戚の中で居心地の悪さを感じてしまう。昭男も哲夫の無責任さに不満を持ち、彼らの関係はギクシャクしたままだった。東京へ戻った哲夫は、下町の鉄工場で働き始める。そこで取引先の倉庫で働く征子と出会い、惹かれ始める。やがて、哲夫は征子が聾唖であることを知って、自分がそれまで無視されていたと思っていた理由を理解し、彼の征子を慕う思いは萎えるどころかむしろ強まっていった。

 

山田洋次と言えば、自分にとっては『幸せの黄色いハンカチ』(1977年)であり、『たそがれ清兵衛』(2002年)なのだが、それらに勝るとも劣らない秀作。

 

田舎に住む年老いた親と都会に出た子供たちという構図は、小津安二郎の名作『東京物語』を思わせる(そして山田洋次は、その見事なリメイクである『東京家族』を作っている)。家族愛を語るには鉄板の設定だろう。

 

バブル期という時代背景をうまく反映したキャラクター設定が生きている。長男は、東京のベッドタウンである千葉に30年ローンでマンションを買い、朝早くから帰宅は夜10-11時という激務でストレスを抱え、次男は、働き口ならどこでもあると言いながら、定職に就いていない。都会と田舎のギャップが最大化しているのがバブル期だったろう。

 

父、次男、その彼女を演じる三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見の三者の演技がいずれもとてもよい。特に、老いを背中で表現する三國連太郎の円熟した演技は非の打ち所がない。彼が次男の恋人を紹介され、新たな家族の誕生を心から喜び、夜も眠れず次男を起こして歌を聞かせるシーンは観ているこちらもうれしくなった。

 

長男家族と共に住むことは気詰まりであると一人暮らしを選ぶことは、孤独死を選ぶことを意味する。そうした暗い、近い将来が暗示されながらも、彼が東京から岩手に戻って隣人と会った時に、「息子と会えて幸せだな」と言われ「ああ、俺は幸せだ」としみじみと答え、希望が見えた。悲劇的な結末を選ばないところが、やはり大衆の支持を得るゆえんだろう。

 

『幸せの黄色いハンカチ』と『たそがれ清兵衛』は、キネマ旬報ベストテン1位、毎日映画コンクール、ブルーリボン賞、報知映画賞、日本アカデミー賞の五冠を達成し、本作品はブルーリボン賞だけ逃したがその差はわずか(ちなみにその年のブルーリボン賞は『あの夏、いちばん静かな海。』が受賞。個人的に北野武の作品の中では一番好きな作品なので、ブルーリボン賞に異を唱えるものではない)。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『息子』予告編

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