『来る』 (2018) 中島哲也監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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原作は澤村伊智の『ぼぎわんが、来る』。第22回(2015年)日本ホラー小説大賞で大賞を受賞した作品だが、同賞史上初めて審査員全員の最高評価によって予備選考を通過し、最終選考でも全会一致で受賞を勝ち取った、高く評価されている作品。

 

それを中島哲也が映画化。自分にとっては、当たり外れのある監督。『下妻物語』(2004年)や『告白』(2010年)といった素晴らしい作品もある一方、『パコと魔法の絵本』(2008年)のようにとてつもなくつまらない作品もある。前作『渇き。』(2014年)も感心できるものではなかった(代表作と考えられる『嫌われ松子の一生』(2006年)はまあまあ)。つまらないと感じさせる作品には、多分に映像的なこだわりが過ぎて、本質的な面白さがおざなりになっている印象がある。

 

最近、田原秀樹の身の回りでは怪異な出来事が相次いで起こっていた。妖怪の仕業であることを疑う秀樹は、3歳の娘・知紗が危険な目に遭うことを恐れ、学生時代からの友人であり民俗学者の津田に相談する。津田はオカルトライターの野崎和浩を紹介し、野崎が霊媒師の血を引くキャバクラ嬢の比嘉真琴と共に秀樹の身辺を調査すると、田原家は想像を絶するあるものに憑りつかれていることが分かった。次々と田原家で惨事が相次ぎ、死者も出るなか、真琴の姉で日本最強という霊媒師・琴子の呼びかけで、日本中の霊媒師が田原家に集まる。

 

構成は三部構成になっていて、それぞれの章を別々の登場人物の視点で描かれている。第一章の語り手は、新婚でイクメンになり、「理想のパパ」をブログでアピールする田原秀樹(妻夫木聡)。第二章の語り手は彼の妻で、育児ノイローゼによるストレスを不倫で発散する田原香奈(黒木華)。そして第三章の語り手は、オカルトライターで過去にトラウマを持つ野崎和浩(岡田准一)。

 

第二章までは、実に面白いと感じた。人間の裏に持つ「毒」をうまく描いていた。原作は未読なので、原作のよさが反映されているのかは分かりかねるが、少なくとも中島監督による脚本はよく書けていると思った。

 

ブログで見せる外づらはいいくせに、実際に妻思いのイクメンかと言えば、育児は妻に押し付けている「あるある」な夫。息子の嫁が実家に来れば、手伝わなくてもいいと気遣う振りをしながら、後から使えない嫁とけなす「あるある」な姑。親友ぶって、いつでも親身に相談に乗るからと言いながら、実はその相手から全てを横取りすることを楽しみにしている「あるある」な親友。それらのエピソードは、オカルトとは全く関係はないが、それを生々しく描くだけで、現代のホラーと言えるかもしれない。

 

ところが、本題のオカルトが前面に出てきた第三章で、自分にとっては大失速。チープなホラー・アクション映画になってしまった。日本最強の霊媒師・琴子のキャラクターも作り込み過ぎ。シリアスなムードとは場違いに、ラーメンを食べたり、ビールを飲んだりと「遊んでいる」のは分かるのだが、自分にとっては「なんだかなあ」という感じだった。

 

役者の中では、中島チルドレンである小松菜奈の演技は出色。ピンクのショートカットで全身タトゥーというインパクトのある外見がこけおどしでない体当たりの演技。この4年間で女優として成長した感があった。また黒木華は、汚れ役なのだが、実にうまい。おさなごを持つ人妻の色気を醸し出していた。

 

妻夫木はうまい役者だと思っているが、「無邪気な薄っぺらな男」が似合い過ぎて少々残念。『渇き。』に続いて、中島哲也が妻夫木に期待する役どころは悪意すら感じる。『悪人』(2010年)のような妻夫木をもう一度観てみたい。


B級ネタを追っかけるライターという役は、『SCOOP!』(2016年)で福山雅治がやった役を思い起こさせるが、それで福山の演技が素晴らしかったことに比べて、岡田の演技はショボい。彼にはストレートなアクションが似合うし、こうしたトラウマを持った複雑で屈折した人間を演じる深みはない。『散り椿』の路線でいいと思う。

 

ホラーとしても全く怖くない。今、上映している作品で怖がりたいのであれば、『へレディタリー』の方をお勧めする。

 

★★★★ (4/10)

 

『来る』予告編

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