『トラ・トラ・トラ!』 (1970) R・フライシャー/舛田利雄/深作欣二監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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実際の戦費の25倍にも当たる製作費をかけたハリウッド超大作。そのタイトルは、攻撃隊指揮官・淵田美津雄が旗艦赤城に向けて打電した「ワレ奇襲ニ成功セリ」の暗号略号から取っている。

 

真珠湾攻撃の初弾は、ハワイ時間の12月7日午前7時55分(日本時間12月8日午前3時25分)。よって、アメリカ国民に「恥辱の日」として覚えられている真珠湾攻撃の日は12月7日であり、日本人が覚えている日とは異なるかもしれない(と言っても、アメリカ人なら誰しもが覚えている日を日本人のほとんどが覚えていないのが実情ではないだろうか)。私事ながら、私の母の誕生日が12月7日で、今年、(日本における「真珠湾攻撃の日」の)12月8日の日に母と父と一緒にこの映画を観た。

 

作品の歴史的考証が気になるところだが、真珠湾攻撃立案に参画した源田実が監修を務めているとあっては、正確でないことはないだろうと安心して観ることができた。

 

作品は、アメリカ軍側を描いた映像と日本軍側を描いた映像が組み合わされている。前者を監督したのは、リチャード・フライシャー。そして後者を監督したのが、舛田利雄と深作欣二。日本側の監督は当初黒澤明が務めていたが、素人の役者を雇い(実業家が多く、その後の彼の監督作品への出資をさせるためだと言われている)、大幅に撮影が遅れたことや巨額の請求から、制作の20世紀フォックスから解雇されてしまった。代役ではあったが、二人の日本人監督による日本側の映像の方が、はるかによく出来ていた。秘密作戦に臨む日本海軍軍人の緊張感が伝わってきた。特にカメラの構図がよく、メリハリのある映像に仕上がっていた。朝焼けに空母から飛び立つゼロ戦の映像は、涙が出るほど美しい。

 

前半は、真珠湾攻撃に至るまでの経緯であり、後半は真珠湾攻撃の戦闘シーン。戦闘シーンはCGのない時代によくここまで作り込むことができたなというくらい迫力ある映像(冒頭述べた、実際の戦費の25倍かかったというのも理解できる)。それに比すると、前半は若干のスローペースと感じられるかもしれないが(私の両親は半分うつらうつら)、歴史的に面白いのは、やはりなぜ奇襲が成功したかという前半部分。

 

日本軍のターゲットは東南アジアであると高を括り、ハワイが攻撃されるなどとは夢想すらしなかったアメリカ軍が、いくつもの真珠湾攻撃の「サイン」を見落としていたことが描かれている。特に重要だったのは、アメリカ海軍の駆逐艦がアメリカ領海内において国籍不明の潜水艦(日本の特殊潜航艇)を発見し、砲撃によりこれを撃沈した(駆逐艦の名前を取って「ワード号事件」と呼ばれる)にもかかわらず、未識別の潜水艦撃沈を漁船などへの誤射の可能性があるとして米太平洋艦隊司令部が無視したもの。

 

本作で一番印象的だったのは、連合艦隊司令長官山本五十六の思惑が真珠湾攻撃を通して如実に描かれていたこと。彼は、当初アメリカとの戦争は無謀であるとむしろ開戦に消極的であったが、それは彼がハーバード大学への留学経験から、アメリカの国力を正確に理解していたため。そして対米開戦となった場合には、開戦と同時に航空攻撃で一挙に決着をつけるべきと考えており、真珠湾攻撃は彼の意向が強く表れていたことがこの作品からも伺えた。

 

アメリカ軍に大打撃を与える戦果を伝えるラジオ放送を聴いて、皆が歓喜する中、山本五十六は次の言葉を放つ。

 

「アメリカの放送によると、真珠湾は日本の最後通牒を受け取る55分前に攻撃されたと言っておる。アメリカの国民性からみて、これほど彼らを憤激させるものはあるまい。これでは、眠れる巨人を起こし、奮い立たせる結果を招いたも同然である。」

 

そして皆の前を辞して、彼が旗艦の甲板から大海原を眺めるシーンが作品のエンディング。太平洋戦争は真珠湾攻撃の成功とは裏腹の展開をその後辿るが、それを暗示させる秀逸なエンディングだった。

 

かなり正確な歴史考証にこだわったがゆえに、少々ドキュメンタリーのような雰囲気がなきにしもあらずだが、やはり日本人としては観ておくべき作品の一つだろう。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『トラ・トラ・トラ!』予告編

 

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