『止められるか、俺たちを』 (2018) 白石和彌監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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若き日の若松孝二を、白石和彌監督以下、若松組の面々が演じた作品。

 

白石和彌が若松組であることは知らなかった。役者は映像で登場するので、関係していることが分かるが、助監督というのはなかなか表舞台に出てくることはないから。彼のこれまでの監督作品でいえば、劇場で観た『凶悪』(2013年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)は悪くはないもののイマ一つという評価だったが、その後に観た『日本で一番悪い奴ら』(2016年)はなかなか面白かった。

 

若き日の若松孝二は、ピンク映画の監督だったわけだが、ピンク映画出身の一般映画監督の大家は少なくない。『シコふんじゃった』 『Shall We ダンス?』 『それでもボクはやってない』 『終の信託』 『舞妓はレディ』の周防正行、『壬生義士伝』 『おくりびと』の滝田洋二郎、『パッチギ!』の井筒和幸、平成ガメラシリーズの金子修介といったところが思い浮かぶ。

 

表現者としての尊厳をかけながら、独立プロダクションの経営を成り立たせるために、芸術の追求と売るために下世話なエロ親父の下半身を刺激しなけらばならない葛藤が実に興味深い。しかしながら、その葛藤を乗り越える若松孝二の何と軽やかなこと。芸術家としての才能を持ちながらも、ビジネスマンとしての才覚があったことが伺える。

 

演じる役者は皆が皆、「若松愛」にあふれていることがよく分かった。若松孝二を演じている井浦新(若松作品では、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』で革命左派の坂口弘を、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』では三島由紀夫を演じていた)は勿論のこと。そして一番よかったのは、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で特に印象的だった森田必勝を演じた満島真之介。映画初出演であったその作品の収録では若松監督に怒鳴られぱなしだったと伝えられるが、その結果は出していた。その思いがこの作品にもぶつけられていたと感じた。「芸術 vs 商業」のバランスが少しコマーシャルに振れた時の作品を試写で観たミキサー助手「福ちゃん」を演じた満島真之介が「こんなものは若松作品じゃない!」と激昂する演技には、思わず「そうだ!そうだ!」と全く部外者ながら熱くなってしまった。

 

若松孝二監督のピンク映画は『13人連続暴行魔』しか観ていないが、実にシュールな作品で、この映画を観て更に若松ピンク作品を観たくなった。

 

『カメラを止めるな』を観た時も思ったが、作品の出来不出来はともかく、映画好きとしては映画制作の裏話を見ることができるのはそれだけでうれしくなってしまう。登場人物の全てがリアルだが、自分が若松孝二以外で知っていたのは、元『映画芸術』編集長で、『赫い髪の女』 『Wの悲劇』 『海を感じる時』の脚本を務め、『この国の空』ほかで監督だった荒井晴彦くらい。やはり、若松孝二の周辺を知っていればいるほど思い入れも深くなり、楽しめる作品と言えよう。

 

★★★★★ (5/10)

 

『止められるか、俺たちを』予告編

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