『フローズン・リバー』 (2008) コートニー・ハント監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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カナダ国境近く、先住民モホーク族の保留地を抱えるニューヨーク州最北端の町。クリスマスも間近のある日、新しいトレーラーハウスの購入費用をギャンブル依存症の夫に持ち逃げされたレイは、2人の子供を抱えて途方に暮れていた。そんな中、夫の車を発見するが、運転していたのはモホーク族の女性。ライラと名乗る彼女は、車を盗んだのではなく鍵がかかったまま乗り捨てられていた車を拾ったと主張する。レイがお金に困っていることを知ったライラは、車を高値で買い取ってくれる人物を紹介すると言った。レイは、ライラに言われたとおりに真冬の氷点下の寒さで表面が凍った国境を隔てるセントローレンス川を車で渡る。しかし、国境を渡ると、待っていたのは不法移民を密入国させるブローカーだった。ライラも夫に先立たれた後に義理の母に幼い子供を奪われ、その子を引き取り一緒に暮らすためにお金を必要としていた。それぞれの切羽詰まった状況を切り抜けるため、レイはライラの行う不法移民密入国ビジネスを手伝うことを決める。人種の違いから初めは反発し合っていた2人だったが、徐々に信頼を築くようになる。

 

サンダンス映画祭ドラマ部門審査員大賞(グランプリ)受賞作。そして翌年のアカデミー賞主演女優賞と脚本賞にノミネートされるも、受賞は逃している。ハリウッド制作以外のアメリカ映画でオスカーを受賞するのは、やはり困難だと思われる。同年のアカデミー賞主演女優賞は『愛を読むひと』のケイト・ウィンスレット、そして脚本賞の受賞作は『ミルク』。主演女優賞は甲乙つけがたいところだが、脚本賞は『フローズン・リバー』が獲るべきだったと思う。

 

ハリウッド制作の作品では、あまり貧困家庭が描かれることはないように感じる。映画を観ると、平均的な家庭でも庭付きの一軒家に住んでいるかのよう。しかし、この作品で描かれているのは、アメリカ人口の15%ないし20%と言われる貧困層であり、トレーラーハウスに住んで、ぎりぎりの生活をしている家庭。なにしろ、毎日の夕食がポップコーンだったり、唯一の娯楽とも言うべきテレビをレンタルしていてその支払いにも困るほど。

 

そしてハリウッド作品では、先住民族の実態も描かれることは少ない印象。この作品で描かれたモホーク族の「保留地」は、彼ら自身の議会、法廷、警察を持つ半自治組織であるため、連邦法の適用は受けるが州法の適用は受けない。違法行為がアメリカ警察に見つかっても、保留地に逃げ込めば、殺人といった重大犯罪以外は州警察は立ち入ることができない、言わば治外法権の地が保留地である。先住民を扱った近年の秀作には『ウィンド・リバー』があるが、この作品もそうしたディープなアメリカ文化を知るには、非常に興味深い作品である。

 

ただ、無名監督で有名な俳優が誰も出ていないという作品は、日本で公開されることは容易ではなく、本作品も配給会社がつかず、公開を見合わせていたが、独立系ミニシアターのシネマライズが名乗りを上げ、日本での公開が実現したという経緯がある。サンダンスでグランプリを獲ってすらそうした状況なので、日本未公開の埋もれた秀作・佳作は少なくないと思われる。

 

終盤、あるショッキングな出来事をきっかけに、あくまでお金のためと割り切りいがみ合っていた二人がお互いを助け合う展開は希望を見せてくれる。アメリカの現実を見せてくれると同時に、普遍的な人の優しさを感じさせる秀作。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『フローズン・リバー』予告編

 

近年のサンダンス映画祭審査員賞受賞作の個人的評価

 

2008年 『フローズン・リバー』 ★★★★★★★ (7/10) 

2009年 『プレシャス』 ★★★★★★ (6/10)

2010年 『ウィンターズ・ボーン』 ★★★★★ (5/10)

2011年 『今日、キミに会えたら』 ★★★★★ (5/10) 

2012年 『ハッシュパピー~バスタブ島の少女~』 ★★★★ (4/10)

2013年 『フルートベール駅で』 ★★★★★ (5/10)

2014年 『セッション』 ★★★★★★★★ (8/10)

2015年 『ぼくとアールと彼女のさよなら』 ★★★★ (4/10) 

2016年 『バース・オブ・ネイション』 ★★★★★★★ (7/10)

2017年 『この世に私の居場所なんてない ★★★★★★ (6/10) 

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