『散り椿』 (2018) 木村大作監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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享保年間、瓜生新兵衛はかつて藩の不正を訴え出たが認められず、妻の篠と共に故郷の扇野藩を離れた。仲睦まじく暮らす夫婦だったが、妻は病に倒れ、新兵衛は最期の願いを託される。「藩に戻って、榊原采女様を助けてほしい」と。かつては剣を競うよき友でもあり、現在は藩の要職に就く采女は、篠をめぐる恋敵でもあった。故郷で新兵衛を迎えた、篠の妹・坂下里美と弟・藤吾は、戸惑いながらも新兵衛の生き方に惹かれ始める。友との再会、過去の事件と新たな疑惑、妻が遺した本当の思い。さまざまな出来事の真相が見え始めたとき、新兵衛と周囲の人々に危機が迫る。

 

黒澤組出身の日本が誇る映像技師木村大作の監督第三作目。前二作の『劔岳 点の記』(2009年)、『春を背負って』(2014年)は正直残念な出来。映像へのこだわりが、人間のドラマを小粒化している印象だった。結論から言えば、本作も同じ誹りは完全には免れないものの、出来は前二作を上回るものだった。

 

題材は前二作の「山」から、今回は「時代劇」(但し、舞台はやはり富山)。まさに黒澤が得意としていたジャンルだが、黒澤の影響を強く感じるのが、雨や雪の半端ない降り方。登場人物の顔が分からないほど。ちなみに、采女の父・平蔵は彼が斬られるシーンしか出てこないが、顔が分からない土砂降りの中でのシーンをプロの俳優に頼みにくいからと監督自身が平蔵を演じている。そのシーンでの撮影は、岡田准一が担当(岡田准一は、本作では出演、殺陣、撮影にクレジットされている)。

 

そして、黒澤映画との違いで言えば、黒澤は男を描くことが抜群にうまかったのに比して、女性を描くことはそれほどでもない。本作は、篠(麻生久美子)、里美(黒木華)という美しい女性があくまで美しく描かれている。それが黒澤作品との違いだろう。

 

メインテーマは、藩の不正を正そうとする若き武士の友情。そして、それだけに終わらず、男女の恋愛感情がきめ細かく描かれた「恋愛物時代劇」と言える。

 

さすが満を持して木村大作が時代劇を作っただけあり、既存の時代劇の枠を越えた作りを見せているが、その多くが男女の恋愛感情、特に新兵衛(岡田准一)と篠の夫婦の愛情の描き方。武士とその妻の間の恋愛感情表現と言えば、節度ある距離感を想像するが、この作品のそれは現代でも自然と思われるほど。しかも、愛すべき妻が元はといえばほかの男の許嫁でもあり、自分が苦労させているという若干の負い目と共にいとおしさが伝わってくる描写は、見ごたえがあった。時代劇で、武士の夫が妻の髪をすくシーンはこれまでなかったのではないだろうか。

 

だからこそ、篠の新兵衛に対する親愛の情の表現には、若干の疑問を感じた。いかに相思相愛であった采女(西島秀俊)との結婚とが采女の母親によって阻まれ、添い遂げることができなかったにせよ、一旦新兵衛と結ばれてからは、きっぱりと采女のことは思い切ったことは、篠の態度からは明らか。しかし、「人(采女のこと)が思う心の強さが今まで私を支えてきました」という末期の言葉や、彼女が采女からの手紙を後生大事に持っていたことは、「男はフォルダ保存、女は上書き」とは矛盾していると思われた。ゆえに新兵衛も誤解をしていたように描かれているが、観客まで誤解したのでは、この作品の真意は伝わらないと思われる。

 

岡田准一がかなりインプットしたと言われる独創的な殺陣は、好みの分かれるところ。力強さと優雅さが共存した殺陣は見どころはあるが、ダンスのように感じることもあった。

 

オールロケーションにこだわり、撮影現場の電柱を映像処理で消すのではなく、実際に移築させたという伝説が残っているが、そこまでこだわるのであれば、殺陣での安易なCGIはいかがなものか。予告では血しぶきが映っていないが、本編では同じシーンでかなり大胆に血しぶきが飛ぶ。好みの問題ではあるが、この作品ではCGIはそぐわないと思う。

 

ストーリーの背景が小出しで進み、登場人物の思わせぶりなセリフも少なくなく(里美の「それではお斬りになるのですか」は「誰が誰をなぜ?」と思ったし、平蔵を誰が斬ったかを采女の母が尋ねた時に「私にそれを言わせるのですか」と采女が答えたり、平蔵の死の責任をなぜ里美と藤吾の兄が取らなければならなかったのか)、展開が分かりにくい(後にならないと分からない)ところは、もう少し整理した方が観客はより映画に入ることができると思われる。

 

木村大作は岡田准一をかなりお気に入りのようなので、このコラボレーションの次作以降の作品が楽しみになった。

 

★★★★★ (5/10)

 

『散り椿』予告編

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