『39 刑法第三十九条』 (1999) 森田芳光監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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相性の悪い森田芳光監督の作品だが、樹木希林が珍しく(国選)弁護士役として出ている、彼女が56歳の時の作品。

 

森田芳光監督の代表作は、『家族ゲーム』であると誰しもが認めるところだろう。そしてそのディテールにオリジナリティを感じるものの、それを斬新と感じるのか、小手先の技巧と感じるのかで評価は分かれるように思う。この作品では、法廷でのカメラワークやライティングにそれが顕著に見られるが、全体としてこなれた印象を受ける。

 

この作品の最大の問題点は、ストーリーの杜撰さ。大筋の部分(以下、ネタバレ)での、過去に無罪となった殺人犯を裁くため、戸籍をすり替えて他人になりすまし、そして刑法第三十九条(第一項「心神喪失者の行為は、罰しない」、第二項「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」)を利用して罪を逃れようとするというところはよかった。しかしながら、細部の詰めが甘い。

 

特に疑問に感じるところは、工藤啓輔が畑田修の妻殺害の現場に立ち会ってしまうというフラッシュバック。それが現実だとして、そんな偶然のタイミングはあり得ない。そして、もしそのあり得ないタイミングに遭遇したとしても、工藤啓輔にとっては畑田修を合法的にしかも自分の手を汚さず殺人犯として官憲に突き出す絶好のチャンス(妻+胎児の殺人では死刑にはならない可能性があるが)。それで妻殺害の罪をかぶってまで畑田修を殺害するに至るだろうか。畑田修が左利きであることは映画では語られていないが、もし彼が右利きならば、その時点で用意周到に準備してきた解離性同一性障害を詐病するストーリーは崩れる。

 

また畑田修が過去の殺人で殺人罪を逃れた主たる理由は、少年法によるもの。第三十九条により完全に無罪となったのだろうが、犯人を成人とした方が、よほどタイトルに示されたテーマの重要度が増すように感じる。

 

岸部一徳演じる刑事は、工藤と柴田のすり替えに気付いているのだが、なぜそれを検察に教えないのだろうか。そして工藤が法廷の証言で、自分で名乗った時に、誰もそれに疑問をはさまず、「工藤啓輔」の存在すら知らない彼らが慌てて訴因変更しそれを認めるのは奇妙。

 

そして鈴木京香演じる小川香深鑑定官の鑑定の適当さには、かなりがっかりさせられた(実際の科学鑑定も大概お粗末なものだが)。

 

法廷のシーンはかなり技巧的。登場人物の早い切り替えや手持ちカメラの揺れが緊張感を演出しているが、法廷内を暗くするのはいかがなものか。人物を浮きだたせようとしているのだろうが、少々リアリティに欠ける気がする。

 

堤真一の迫力ある演技はとてもよかった。そしてやはり樹木希林の存在感はさすが。弁護士というあまりキャラクターにフィットしていない役柄なのではというのは杞憂に過ぎなかった。

 

R.I.P. 樹木希林。

(個人的に、彼女のベストは河瀨直美監督『あん』

 

★★★★ (4/10)

 

『39 刑法第三十九条』予告編

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