クリスティアンは現代美術を扱う美術館のキュレーター。バツイチだが愛すべき2人の娘があり、そのキャリアは順風満帆だった。彼は次の企画として「ザ・スクエア」という作品を展示すると発表する。それは、地面に描いた正方形の中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートで、現代社会にはびこる貧富の格差による差別やエゴイズムに一石を投じる狙いがあった。ある日、携帯と財布をすられてしまったクリスティアンは、携帯のGPSによって犯人の住むアパートの建物をつきとめると、その全戸に脅迫のメモを配る。数日後、盗まれた物は無事手元に戻り、彼は深く安堵する。しかし、それだけで無事に終わったわけではなかった。一方、美術館に依頼された広告代理店が、展示間近の「ザ・スクエア」について、プロモーションのため、作品のコンセプトと真逆のイメージの動画をSNSに投稿し、狙い通りに炎上することで注目を集めることには成功するが、世間の怒りはクリスティアンの予想をはるかに越えていく。

 

スウェーデンのリューベン・オストルンド監督が、2017年・第70回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した作品。テーマは、他者への無関心や欺瞞、階層間の断絶といった現代社会の問題を浮き彫りにするもの。

 

人の心の醜怪さを暴く作品と言えばラース・フォン・トリアーを思わせる。しかしこの作品は、ラース・フォン・トリアーの作品よりは軽妙であり、居心地の悪さを感じながらも笑ってしまえるユーモアがある。それは主人公の不運は確かに不運なのだが、自ら招いたものであり、またそれほどには悲惨には映らないからであろう(と言っても、やはり悲惨なのだが)。

 

そうしたユーモアに隠されたテーマはやはり奥深い。映画の中で描かれている現代美術の一つに、「人を信じる」と「人を信じない」とのボタンを押させる作品がある。大概の人は「人を信じる」を選ぶだろうが、映画の中でもカウンターの数は「人を信じる」が42に対し、「人を信じない」が3。そしてほかのシーンでは、ショッピングモールで見失った娘を探すために、クリスティアンが物乞いに荷物を預ける場面がある。「人を信じる」というボタンを押した者のどれだけが、クリスティアンの荷物を心配しただろうか。そうした、人を見た目で差別するということを思い知らされるのがこの作品の狙いであろう。

 

近年のパルム・ドールの作品としては、2014年の『雪の轍』よりは幾分よかったが、2016年の『わたしは、ダニエル・ブレイク』の方がよかったという評価。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』予告編