『楢山節考』(1983年)で、カンヌ・パルム・ドールを受賞した今村昌平監督作品。これも傑作。

 

とめは東北の農村に私生児(戸籍上知恵おくれの父親はいるが、実際の父親ではない)として生まれた娘。彼女は奉公に出され、奉公先で強姦され娘を産む。成人して軍需工場に女工として勤め、課長にもてあそばれる。その後、東京に出て「オンリーさん(米軍将校の愛人)」の家政婦をし、その子供を事故で死なせてしまったことから新興宗教に加入し、そこで知り合った売春宿の女将に騙され客を取らされる。そして、女将を警察に売り、売春宿を乗っ取る。彼女を愛人とする旦那がいたが、その旦那を娘に寝取られてしまう。

 

大正から昭和をたくましく生きた女性の生き様を描いているのだが、悲惨なはずの彼女の姿を見ても、悲壮感は漂わない。それは彼女の生命力に勇気づけられるから。

 

この時代、彼女と同じく性を強要され、犠牲となった女性は数多くいたのだろう。その全てが彼女のようにたくましく生きたとは思えないが、かと言って、あり得ないわけではなく、リアリティにあふれている。そしてとめを演じた左幸子の存在感は圧倒的だった(ベルリン国際映画祭女優賞受賞)。

 

作品途中、何度かストップモーションにかぶせて詠まれるすっとんきょうな短歌がユーモラス。これも今村昌平監督らしい趣向だろう。

 

一人の女性の生き様をルーペでのぞき込み、克明に記録した「昆虫記」のような作品(オープニングでうごめく大写しのマイマイカブリの映像の後、昆虫は出てこない)。是非観てほしい。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『にっぽん昆虫記』予告編