アイスランドの作品。第12回ノルディック映画賞(The Nordic Council Film Prize)受賞作。ノルディック映画賞は、ノルディック・カウンシル(北欧理事会)が設けた映画賞で、2002年にノルディック・カウンシル50周年を記念して、アキ・カウリスマキの『過去のない男』に贈られたのが最初。2005年以降は毎年、北欧5カ国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、アイスランド)のノミネート作品の中から1本を選んで表彰するという形式になり、現在に至っている。

 

43年間恋人が出来たことがないフーシ。独身の彼の趣味はジオラマ製作。職場では同僚にいじめを受けているが、逆らうことが出来ない。見た目は強面で、近所の仲良しの少女をドライブに連れて行っただけで誘拐犯扱いされてしまう。そんな男が、初めて知った恋。しかし彼女は双極性障害で、人との付き合いや仕事も続けられなかった。そんな彼女にただただ優しさだけで近づくフーシだった。

 

北欧発信ということもあり、ハリウッド的ハートウォーミング映画みたいなことにはならない。二人が結ばれて終わるような安易なハッピーエンドではない。それがいい。

 

観ている誰しもがフーシに踏み出してほしいと思い、彼が恋愛に勇気を持つことを応援する。そして彼の変化は観ていて好ましく思える。

彼女が鬱で仕事(ゴミ収集場での分別作業)を続けられなくなった時に、彼女の肩代わりとして働くフーシ。「おい新入り!」と声を掛けられ一瞬身構えるのだが(それは、それまでのイジメを知っている観ているこちらも同じ)、「試合を見に行くからお前もどうだ?」と誘われて戸惑ったような顔をする。まるで虐げられて当然の自分が誘われて驚いたかのように。そして「これはお前の分だ」とビールを差し出される。世の中の全ての人が冷たいわけではないと、主人公にそっと微笑むような優しいシーンが印象に残った。
 

彼女に一旦は受け入れられながら、手の平を返すように拒絶される。典型的な双極性障害の行動なのだが、それに怒りや諦めで反応するのではなく、適当な距離感を見出そうと、前向きなエンディングがよかった。自分にできる限りのことをしながらも、相手を待つのではなく(それは相手にとってプレッシャーになるから)、自分一人で踏み出す主人公。とても切ないけれど、彼らに幸多からんことを願うハッピーエンドなんだと思った。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『好きにならずにいられない』予告編