『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマン監督の最新作。

 

メキシコ麻薬戦争を追った『カルテル・ランド』は実に興味深かった。アメリカとの国境付近の市街を麻薬カルテルが事実上統治し、それに対して自警団が自然発生する。初めは傍若無人で非人道的な麻薬カルテルから自由を取り戻すために立ち上がった自警団が、勢力拡大と共に堕落していく様が非常にアイロニカルだった。しかも、スペイン語をよく理解せず、ほかのクルーなしで単身飛び込んで撮影するマシュー・ハイネマン監督が全く意図していない混沌とした展開に、ドキュメンタリーの面白さを感じた。

 

本作品は、地球規模では最重要事項の一つとも言えるIS(イスラム国)に関するもの。ラッカはイスラム国の首都とされる都市だが、そこに生まれ住んだ一般人が、ISの残虐行為を世に知らしめるため、命を賭してジャーナリズム活動を行う様子をドキュメンタリーに収めている。彼らは自らを「RBSS (Raqqa is Being Slaughtered Silently)」と呼び、それが邦題になっている(作品の原題は『City of Ghosts』)。

 

ドキュメンタリーとしての完成度は前作に比してはるかに高い。しかし、それは自ら火中に飛び込んでの撮影とは違う環境で制作されたからであるように思える。ラッカでの衝撃的な映像は、RBSSあるいはISによるもので、マシュー・ハイネマンによるものではない。つまり、マシュー・ハイネマンの作品としては、ラッカの惨劇を描いたものというよりは、それを命を賭して全世界に発信するジャーナリストの物語というものである。

 

だからといって作品の価値が損なわれるわけではない。ISというイスラム原理主義に根ざす過激集団のありようには不案内な我々には、この作品によって少しはイメージが明確になるであろう。そして、この作品の本来のテーマである、ジャーナリズムの尊さには感動せざるを得ない。

 

作品の扱うテーマの重要度という点では前作を上回るものの、純粋に映画作品としては前作の方が面白かったと思う。あくまで個人的感想だが。

 

★★★★★ (5/10)

 

『ラッカは静かに虐殺されている』予告編