2017年のバンクーバー国際映画祭で、グランプリに相当する観客賞を受賞したカナダ映画。土曜日の夕方という混む時間の上映とは言え、公開3週目にして最前列まで満席で、上映終了後には拍手が起きた。それほどカナダ人の心には刺さる作品。題材は、カナダのResidential School制度の悲劇を扱ったもの。

 

Residential Schoolとは、カナダの先住民族の子供を伝統文化から隔絶して西欧キリスト教文化に教化するため、政策としてキリスト教会によって運営された寄宿学校。1800年台末から1996年に最後の学校が閉鎖されるまで、先住民族の子供の約30%に相当する15万人が収容され、そのうち明らかにされているだけで6000人に上る子供が過酷な生活環境の中で命を落としたとされている。

 

ちなみに、「エスキモー」は「生肉を食べる者」という侮蔑的ニュアンスを含むため、カナダでは差別用語。一般的には彼らの最大民族である「イヌイット(彼らの言語で「人」という意味)」をもって彼ら先住民族を指すことが多い。あるいは「First Nations」や「Indigenous People」。


予告編を見れば、先住民族の子供が(白人のスポーツと思われている)ホッケーを通じて、差別と戦いながら成功する話のように見える。主人公は、彼ら先住民族の子供を動物のように非人道的に扱う教会神父やシスターの中にも理解してくれる一人の優しい神父と出会い、ホッケーを覚え、そして類まれな才能を持って、将来を嘱望されるスタープレイヤーに、という話のように想像する。しかし、そのようなハリウッド予定調和的展開の甘い期待は完全に裏切られてしまう。

 

主人公は結局、差別に立ち向かえず自ら破滅し、そしてResidential Schoolでの暗黒の記憶もフィードバックする展開を観客は見せられる。そして殺伐とした気持ちになり、制度が彼らの心と身体を殺してきた過去を思い知らされる。

 

彼は最後には戻るところを見出すのだが、それはやはり先住民族の仲間のもとというエンディングも切なく辛い。

 

先住民族と外来の移植者との間における問題はカナダだけではなく、世界いたるところに見られる。そしてその少なからずが暗黒の過去を持っている。そうした問題に対するfood for thoughtとして非常に興味深い作品。映画としても心を揺さぶられる秀作。あまりに救いがないのだけが辛いところ。日本での公開はあまり期待できないが、チャンスがあれば是非。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『Indian Horse』予告編