ウェス・アンダーソンの才気にショックを受けたのは、2001年の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』だった。以来追い続けている監督だが、彼の作品で好きなのは2007年の『ダージリン急行』(比較的彼らしくない、とてもよい作品)と2012年の『ムーンライズ・キングダム』(実に彼らしい、とてもよい作品)。そのウェス・アンダーソンが作ったストップモーション・アニメ。

 

彼にとってストップモーション・アニメは初めてではなく、2009年に『ファンタスティック Mr.FOX』という作品を撮っていてそこそこ評価も高かったが、予告編を見てまあいいかとスルーしていた。この作品は予告編も面白そうだったし、舞台も日本ということもあり(監督は黒澤明と宮崎駿の影響を強く受けたと言っている)、観てみることにした。

 

これはウェス・アンダーソン・ファンとしては、かなりというか相当がっかりさせられた。

 

オープニングから、プロダクション・ヴァリューの高さ、着想の奇抜さに「Wow!」という感じだったのだが、それは30分ほどで飽きてしまった。1時間41分はこの作品に必要とは思えなかった。

 

まずストーリーが弱い。犬がゴミの島に捨てられるのは「犬インフルエンザ」が蔓延することで、パンデミックを恐れてということなのだが(つまり鳥インフルエンザの犬版)、それを策略として政策に掲げる小林市長の動機もイマ一つピンとこないし、愛するペットをゴミのように捨てるという設定も納得がいかない。

 

そして何より、(犬はいいとして、人間の)キャラクターが生き生きしていない。多くの飼い主が犬を見捨てる中で、小林少年(市長は養父)だけは小型飛行機を強奪してまでゴミの島に自分の愛犬を探しにいくというのがメインのプロットなのだが、彼と愛犬スポッツとの再会には特に感動的なものはなく、お互い冷めていたように感じた(大体、オリに入れられて捨てられて、自分が鍵を持っているのなら、数ヵ月経ってから助けに行くんじゃなくて、すぐ行けよと思った)。

 

登場する人間は一人を除いて全て日本人という設定なのだが、一人だけヒロインが交換留学生のトレイシー(声優は『フランシス・ハ』主演のグレタ・ガーウィグ)。これがまた微妙なキャラ設定。敢えてイングリッシュ・スピーカーにする必要があったのか。

 

ストーリーの弱さは、人間のセリフがほとんど日本語なのに、字幕が出ないことからも明らか。つまりその部分は日本語を理解しない観客には全く意味不明なのだが、それでも全く支障がないということを物語っている。

 

声優は豪華。ブライアン・クランストン、スカーレット・ヨハンソン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、ハーヴェイ・カイテル、世界のケン・ワタナベ、そしてあのヨーコ・オノ。よかったのはエドワード・ノートン。彼だけが「ウェス・アンダーソン語」を話していたように感じた。

 

確かにプロダクションの作り込みは楽しく面白いし、珍奇な日本風俗(例えば近未来なのにチョンマゲがいたり)もむしろ興味深かった。ただウェス・アンダーソンは、やはり実写でいいかな、と。パトリス・ルコントの『スーサイド・ショップ』(2012年)ほどはひどくなかったけれど。

 

★★★★ (4/10)

 

『犬ヶ島』予告編