『羊の木』 (2018) 吉田大八監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~


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近作では、『紙の月』(2014年)がよかった吉田大八監督(『桐島、部活やめるってよ』は個人的にはイマイチ)。この作品はなかなか興味深かった。

 

寂れた港町に移住して来た6人の男女。彼らの受け入れを担当することになった市役所職員の月末(錦戸亮)は、過疎問題と刑務所の経済的負担を同時に解決するために、自治体が身元引受人となって仮釈放の受刑者を受け入れるという、国家レベルのプロジェクトだと知る。その月末にすら、彼らの犯歴は明かされなかったが、やがて月末は、6人全員が元殺人犯だという事実を知ってしまう。そして彼らを受け入れた町の住民の日常に少しずつ狂いが生じ始める。

 

「羊の木」とは、かつてヨーロッパで木綿が羊の生る木から取れると信じられていたことに由来している。見かけから信じられている虚構と言ってもいいだろう。この作品では、6人の仮釈放の元殺人犯がその「羊の木(に生る実)」を表しているのだと思う。

 

元犯罪者だからといっても、彼らの更生の仕方は色々であることは容易に想像できる。しかし、人は元犯罪者であると聞けば一様に色メガネで見てしまう。この元犯罪者と彼らの周りの人々のドラマから、いかに人を信じることが危うく、難しく、そしてそれが尊いかということを教えられる。

 

人を信じることが難しいその最たる例が、松田龍平演じる宮腰。彼は、当初はむしろ当たりの柔らかい感じなのだが、まさにサイコパス。彼を信じることは自らに危害を招くことになる。しかし、彼を信じた月末が結局は無事であることに救われる。つまり、最悪のケースであっても、不幸な結果に終わらないことがこの作品の与える希望だろう。

 

6人のストーリーの中で、一番よかったのは田中泯演じる元ヤクザと彼を雇うクリーニング屋の女店主(安藤玉恵)の物語。人を信じるということの尊さが描かれていた。

 

そうした作品の持つ崇高さからすると、木村文乃演じる文が、恋人となった宮腰が殺人犯であったことを聞かされ「でも罪は償ったんでしょ」と言いながらも、彼を拒絶することは少なからず残念な展開だった。そして高校時代から完無視の月末と最後はなんとなくいい感じになるのも安易な展開ではあった。

 

スリリングな展開で、楽しめないわけではないが、一筋縄ではいかないという難物。観て損はない。人を信じることの難しさや尊さをじっくり考えるいい機会になるかもしれない。

 

★★★★★ (5/10)

 

『羊の木』予告編

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