『歩いても 歩いても』 (2008) 是枝裕和監督

Thu, September 28, 2017 09:00:45 Theme: 邦画 あ行

 

新作『三度目の殺人』もすこぶる面白かった是枝監督2008年の作品。この作品の後、『そして父になる』(2013年)、『海よりもまだ深く』(2016年)に連なる「家族の物語」を描いた作品。そのいずれも主人公の名前が「良多」というのも是枝監督のこだわりか。

 

長兄の15周忌に集まる家族。一見和やかだが、その実彼らの間では確執がある。特に、父・横山恭平(原田芳雄)と息子・良多(阿部寛)。父と息子の関係が是枝家族物語では中心になることが多い。この作品もそう。父は引退した町医者。子は幼い頃には父を尊敬し、父と同じ医師になることを夢見ていたが、今は無職の身。お互い素直になれずに反発しあっている。

 

そして何も起こらない。何も起こらないであろうことは、物語の展開から読めていたが、だからといって退屈なわけではない。まさに我々の日常と同じく、何も起こらない彼らの日常の一コマがそこに描かれている。そして、彼らの間の感情の揺れや衝突が観ていて非常に興味深く、面白いのである。

 

家族の中では、男と女の対比もされている。男は単純で、女は複雑。まさに現実の世界そのものであろう。その複雑な女性の代表が、樹木希林演じる母親・とし子。息子が死んだのは、溺れていた人を助けてであった。長兄の命と引き換えに一命を取り留めた者が、15周忌のために訪れても、恭平は口もきこうとしない。とし子は「よく来てくれた。来年も再来年も来てね」と言いながら、その実は、息子を「殺した」その人物に一年のその日だけでも過去を思い出させて苦痛を与えるためであることが語られる。このシーンの樹木希林の演技はさすがであった。

 

同じく複雑な女性を演じるのが、良多の妻のゆかり(夏川結衣)。彼女は夫に先立たれ、連れ子と共に良多と新しい家庭を築こうとしている。夫の実家を訪れ、精一杯の気遣いをしながら疎外感を覚えるストレスを夏川結衣はよく演じていた。

 

そのほか、良多の姉・ちなみ(YOU)の子供たちとゆかりの連れ子の子供たちの関係も非常にリアルに描かれていると感じた。

 

タイトルの『歩いても 歩いても』は、とし子が数十年前の恭平の浮気を実は知っていたというシーンで小道具として使われるいしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」の歌詞から取られているのだが、あまり深い意味はないながらも、なんとなく映画とフィットしているという(『海よりもまだ深く』がテレサ・テンの「別れの予感」から取られたのと同じパターン)、これも是枝作品の妙であろう。

 

『奇跡』(2011年)ほどの完成度はなく、また『誰も知らない』(2004年)ほどの驚きもないが、この作品も是枝監督の秀作の一つと言えるだろう。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『歩いても 歩いても』予告編

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