いつも高評価を得ているクリストファー・ノーラン監督。この作品は彼の初めての戦争映画。この作品も彼の過去の作品同様大ヒット中で、評価も上々だが、個人的にはクリストファー・ノーランとはやはりと思うほどの相性の悪さを感じた。

 

作品は、第二次世界大戦初期に実際に起こった、フランス領土でドイツ軍侵攻により孤立したイギリス軍の撤退作戦を題材にしている。イギリス軍は一方的に攻撃を受けているのだが、その攻撃をしているドイツ兵は(空中戦でのメッサーシュミットのパイロットも含め)、一切顔や姿が映らないというのはなかなか興味深かった。映画の中でのセリフは極端に少なく、カメラのほとんどは逃げ惑うイギリス兵を追っている。そのため、観客は姿の見えない敵兵に襲われている感覚を覚える。傍観しているというよりは、その場にいるような感覚がこの作品がヒットしている原因と思われる。

 

本編は3つのパートに分かれる。「The Mole (突堤)」「The Sea」「The Air」と名付けられているが、時間は同時進行ではない。それぞれは1週間、1日、1時間という異なる長さのストーリーであり、それが最後には一時点に集約するように構成されている。クリストファー・ノーランらしい凝りようだが、それぞれのパートが切り替わる時に、時間が前後するので、観ていて若干混乱するかもしれない。

 

CG嫌いのクリストファー・ノーラン監督だけに、本作品もとことんグリーンスクリーンなしの「本物」にこだわっている。CG/CGIの刺激に慣れ切っている目にはかえって新鮮と言えないこともない。しかし、戦争映画をCGなしで撮ることはやはり難しいと感じた。

 

特に「The Air」のパート。現存するスピットファイアとメッサーシュミットBf109(に似せたイスパノ HA 1112)を実際に撮影に使った意気込みは感じるが、それらを破損するわけにもいかず、空中戦の様子も各々の戦闘機に据え付けたカメラ映像だけでは若干単調に感じた。

 

クリストファー・ノーランは、「この作品には『プライベート・ライアン』のような緊張感はいらない」と言っているらしいが、全く流血シーンがない戦争映画というのもどうなんだろう。銃撃で人がバタバタ倒れてはいるが、不思議なことに血は全く流れない。現代の戦争映画で、これほど血を見ない作品も珍しいのではないだろうか。

 

あと背景の音楽も少々耳障りなほど目立っていた。ストーリーがあまりにシンプルで、かつ映像が刺激的でないだけに、そうしたスパイスも必要だということなのかもしれないが、自分にはあまりピンとはこなかった。

 

実際の作戦では、撤退を余儀なくされたという局地戦的には敗戦なのだが、「ダンケルク魂」という言葉が生まれ、その後のイギリス人の士気高揚に影響したと言われる。民間人が率先して自国の若者の命を守ったことの意義は大きかったのだろう。若者の命を無駄に費やした日本との差を考えながら観るのもいいかもしれない。

 

ということで、最近の戦争映画であれば『ヒトラーの忘れもの』『ハクソー・リッジ』の方が好みだし、クリストファー・ノーラン監督作品ということであれば、断然『インターステラー』が自分にとってのベスト。

 

★★★★★ (5/10)

 

『ダンケルク』予告編

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