シャーリーズ・セロン主演のアクション映画にあまり食指は動かなかったのだが、息子が「『ジョン・ウィック』の監督だからアクションはしっかりしてるんじゃないか」と言う。ん?そうだっけか、と調べてみるとデヴィッド・リーチは、クレジットされていないものの、『ジョン・ウィック』の第二班監督として一部メガホンを取っており、『LOGAN/ローガン』の冒頭のおまけ映像『Deadpool: No Good Deed』の監督もしていた。長編の監督として、正式には本作が初。そして来年公開の『Deadpool 2』の監督が予定されている。ということで、まあ観てもいいかなと観てみた。

 

冷戦末期、ベルリンの壁崩壊直前の1989年。西側に極秘情報を流そうとしていたMI6の捜査官が殺され、最高機密の極秘リストが紛失してしまう。そのリストには、ソ連で活動中のエージェントの名前が記されていた。リストの奪還と、裏切り者の二重スパイを見つけ出すよう命じられたMI6の諜報員ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)は、各国のスパイを相手にリストをめぐる争奪戦を繰り広げる。

 

シャーリーズ・セロンのアクションは悪くない。個人的には、アクション・シーンの切れ味では、『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセンのフィスト・ファイトと、『ジョン・ウィック』のキアヌ・リーヴスのガン・アクションが双璧だと思っているが、女性のアクションとしてはこれまでのベストかもしれない。但し、やられ過ぎ。主人公が全く傷つかないというのもリアリティがないが、これだけ傷だらけになっても動き続けられるというのも逆にリアリティがない。というくらいボロボロのシャーリーズ・セロンを見ることができる。

 

しかし、ストーリーが弱い。いわゆるスパイ物なのだが、二重スパイ、多重スパイが入り乱れ、混沌としており、結局「たかが」エージェントのリストを奪い合うという他愛ないもの。いくら80年代とはいえ、エージェントの名前が一覧になっているリストが存在するというアナログ感も納得いかない。

 

そして最大のネックは、主人公のロレーンに共感できないこと。ポージングにいちいちかっこつけ過ぎという難あり。

 

作品中に映画館での格闘シーンがあり、上映されていたのはアンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』。『ストーカー』は1979年の作品であり、西ドイツ公開は1981年。時代考証を曲げてまでの、「こんな映画好きなんだぜ」という「分かってる感」も引っかかった(個人的に『ストーカー』は好きな作品ではないこともあるが)。

 

映画の売りの一つが80年代ロック満載という点。確かに、デペッシュ・モード、ニューオーダー、デビッド・ボウイといった音楽はストライクゾーンのしかも真ん中近いのだが、選曲のセンスがいかにも「ベスト80's」というひねりのなさ。いくらベルリンが舞台だからといって、ファルコやネーナはねえな(と、観ながらダジャレを考えていた)。せめてアルファヴィルくらいひねって欲しかった。同時代的共感で80年代ロックを経験したのではない浅さが感じられた(多分、監督は現在40歳そこそこ)。ロレーンのキャラクターは、デボラ・ハリーをかなり意識していると思われるが、ブロンディの曲は使われていなかった。

 

シャーリーズ・セロンの無意味なレズビアン・セックス・シーンもあり、それを喜ぶ人は是非という程度の作品。日本では10月20日公開予定。

 

★★★★ (4/10)

 

『アトミック・ブロンド』予告編