『彼女の人生は間違いじゃない』 (2017) 廣木隆一監督

Thu, July 27, 2017 00:33:45 Theme: 邦画 か行

 

今なお東日本大震災/原発事故の傷跡が残る福島の現在を映し出す作品。同様のテーマでは園子音監督の『希望の国』(2012年)といった佳作があるが、この作品も劣らず優れたもの。

 

東日本大震災から5年、福島県いわき市。みゆき(瀧内公美)は、父の修(光石研)と仮設住宅に二人で暮らし、市役所に勤めている。修は妻の死から立ち直れずに自暴自棄の生活を送り、みゆきと衝突する。そしてみゆきは、「東京の英会話教室に通っている」と修に嘘をつき、デリヘルのバイトのために週末には高速バスに乗って渋谷に向かうのだった。

 

金銭を目的とせずにデリヘルで働くことは、みゆきにとっては自傷行為に類したものなのだろう。それでいかにして心のバランスが取れるのか、それを知ろうとすることは深淵の闇を覗きこむように感じる。主人公はタイトル通りみゆきなのだが、福島と東京という二つの都市でのドラマの中で、福島においては、みゆきの父の修やみゆきの市役所の同僚勇人(柄本時生)も同様に重要な役割を担っている。修が「かあちゃん、寒いやろ!」と泣き叫びながら、亡き妻の服を海に投げ込むシーンや、勇人が痛飲して嘔吐しながら、「福島がんばれ」と書かれたビラを見て「頑張ってるよ」と毒づくシーンは印象的である。

 

震災から5年経っても、その傷跡が人の心から消え去らないことは想像できても、外の人間にはやはりリアルには感じられない。仮設住宅に住む東電社員が嫌がらせにあったり、帰還困難区域の墓を移転する際遺骨は移せなかったりといったシーンには観ていてはっとさせられる。

 

ポルノ出身の廣木監督だけに、濡れ場は手慣れている。そのシーンをまさに体当たりで演技した瀧内公美の存在感は作品の中であった。先に述べたように、脇を固める光石研や柄本時生の演技も手堅い。唯一、橋口亮輔監督作『恋人たち』で主役を演じた篠原篤の演技はギクシャクしていた。ちなみに、たまたま渋谷の劇場で同じ回の上映を観た観客の中に柄本明がいた。彼は息子の演技をどう見たのだろうか。

 

壊れかけた人々の心が未来に向けて回復する希望を持って、作品は締めくくられている。廣木隆一の小説デビュー作を自らメガホンを取った作品。観て損はない。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『彼女の人生は間違いじゃない』予告編

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