『13人連続暴行魔』 (1978) 若松孝二監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



日本の映画界は1960年代後半以降、テレビの影響で収益が低下し、低コストで高収益を出すため、映画製作会社は数多くのポルノ映画を作る。日活はその一番大胆なケース。現在日本の一般映画を作る多くの監督がポルノ映画監督デビューをしているのも、ハードルが低かったからにほかならない。

『水のないプール』『エロティックな関係』『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、近年では『キャタピラー』や『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』といった作品を作った若松孝二監督もその一人。彼がピンク映画を作っていた時は、「ピンク映画の黒澤明」と形容されヒット作を量産していた。

1978年の本作も彼の鮮烈な作品の一つ。彼の作品は「怒り」がモチベーション。この映画でも改造拳銃を手にした19歳の主人公の破壊衝動は激烈。彼は、ただレイプして殺し、あるいは殺して死姦するだけ。

何のカタルシスもなければ、共感もできないが、パワフルな映画であることは間違いない。ほとんど脈絡なく犯行に及ぶシーンには、ギターやハーモニカやサックスやバイオリンといった楽器がフリージャズ風に奏でられる。非常にシュールな印象。

ラストシーンは不条理の一言で、観客に解釈の余地を与えている。

エロティックなシーンが多いアート映画といった風情の作品だが、この時代のポルノ映画を同時代的経験をしていない自分には新しかった。70年代、80年代の日本の良質ポルノ映画をもっと観てみたいと思った。

★★★★★ (5/10)

『13人連続暴行魔』より 阿部薫(フリージャズのサックス奏者)の演奏