母の錯乱状態に落ち込んで帰宅した日の夜


母からのこの日最後の電話


「布団がずり落ちるから戻して欲しい」


そう言うので


「看護師さんを呼んでお願いしてみて」


と、言うと


「うん、わかった」と、えらく素直な返答


次の日の入院5日目は


朝から全く電話がなかった


毎日20回近くあった電話が急になくなると

 

なぜだか不安になってくる


午後、仕事をしていると母から電話


「あのな、近所の川沿いの細い道あるやろ?」

「あそこの溝にはまってな」

「困ってたらトラックのお兄さんが助けてくれてん」


そう、喋り出す😓


夢でも見ているのだと


今、病院にいるんやろ?と、聞くと


「違うよ~❗◯◯クリーニングの横」

「私、お兄さんにお礼したいんやけど」

「何も待ってなくて」

「あんた悪いけどお金持ってきてくれる?」

「今トラックに乗せてもらってるねん」

「電話もなくて借りてかけてるんよ」


スマホの画面を確認すると


母の携帯からの着信


ちょっと寝ぼけてるんかな?と、


なだめて電話を切ろうとしても


「お兄さんに待ってもらってるから」

「ちょっとだけでいいからここへ来て」


そう言うので


側に誰かおるん?と、聞いてみる


「おるよ❗」


じゃあ電話代わってくれる?


「よっしゃ、ちょっと待ってな❗」

「すみません~❗」

「すみません❗」

「すみません❗」


と、誰かを呼んでいるよう


そしてもちろん誰からの返答もなく


「あれ?こっち向いてくれへんわ」と、呟く


ママ、やっぱりそこは病院やろ?と、言うと


「違うよ❗トラックの中やよ」と、答える


わかった。すぐ行くから待ってて❗


そう言って母からの電話を切り


慌てて詰所に電話する


念のため母の所在を確認すると


やはり病室にいるようなので


看護師さんに様子を見に行ってもらうよう


お願いして電話を切った


前日の医師の


せん妄を和らげるために薬を投与する


その言葉が甦る


向精神薬の投与のせいなんだろう


せん妄も難儀ではあるけど


向精神薬の絶大な効果?も恐ろしい


壊れた母がもっと壊れる気がしてならない


そうなるといてもたってもいられなくなり


医師に電話をかけ許可を得て


この日も母に面会させて頂きました


そこには前日と打って代わって


大人しい母がいた


穏やか、とは言い難く


どこか遠い所を見つめる呆けた母の顔


私に気付くと


なにやら喋り出したけれど


的を得られない戯言のような事ばかり


短い面会時間ですが


生きていて意識のある母に


会える事には感謝なのだけれど


思い通りにならず


暴言を投げまくる母を見るより


この日の母を見ているのがとても辛かった


薬でコントロールされ


本来の自分を身体の奥に閉じ込められた母


私は逃げ出したくなる衝動に駈られました


帰宅してからも


思い出しただけで涙が溢れてきて


何もしてあげれない無力な自分が情けなく


一縷の光が見えてきそうな状況なのに


私の心はますます暗闇に沈んでしまいました