郷里の信州から「雪下ろししました」と写真を添えて報告をいただいた。何分にも築60年、しかも戦後の物不足の時代に父が一念発起して建てた家だから、決して堅牢とは言えない建物だが、地元の人がなにくれとなく気づかいして下さるお蔭で持ちこたえている。
私が小学校4年生の時建築が始まった。柱が立ち、壁が塗られて家らしくなったが、建具が入らないまま冬を迎えてしまった。建具がないので取り敢えず板を立てかけて吹雪を防ぐことにしたが、どっこいそうは問屋がおろさず、朝になると寝ていた顔に雪が積もっていた。今にして思うがよくぞ凍え死ななかったものだ。
当時はほぼ自給自足の暮らしだったから、父は豚、羊を始め、鶏、七面鳥、うさぎなど飼い、羊の毛は母が紡いで子供たちのセーターになり、豚は冬の間の貴重な食料となった。冷蔵庫などない時代だから、雪を掘って大まかに刻んだ豚をそこに埋め、必要に応じて掘り出してきた。
野沢菜も大きな桶に漬け込んで、冬中の食卓に乗せられた。ただ、これを桶から取り出してくるのが子供たちの仕事なのだが桶には氷が張っていて、それを割ってからでないと取り出せない。「手が切れる」を実感する冷たさに耐えて取り出してきた野沢菜の旨さは例えようもない。
「もう1回雪下ろしするようです」。今年は近年にない大雪だ。