小説「すれ違うふたり」最終話。 | てつさんのアスペルガー症候群奮闘記

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私は35歳でアスペルガー症候群と診断されました。今までの生き難さがなぜなのか少しずつですが見えてきました。週1回、子の刻に更新されます。

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3月のある日。マナブくんはこの日で3年ほど勤めた資格専門学校アルバイトの最終勤務日で午後9時半までの勤務で準備も片付けも終わってもう少しで帰れると思っていたところに見覚えのある女性がビデオを持って現れた。ユキコさんだった。マナブくんも驚いたがそれ以上にユキコさんが驚いていた。マナブくんはビデオを持って来た時点でユキコさんがどうなったのか分かったのでそこには触れないことにした。ユキコさんが、

 

「マナブくん、ここでバイトしているの?」

 

と聞いてきたので2年生の時からやっていると伝えた。ユキコさんが、シンジくんあたりからどうなったかは聞いていたと思うが、

 

「マナブくんは公務員試験どうだった?」

 

と聞かれたので、

 

「兵庫県庁の1次試験は合格したけど2次試験でダメだった。でも4月から京都のお医者さんの団体で働くんだ」

 

ユキコさんはまだマナブくんに想いを寄せていたのか、ちょっと勇気を出して(と思う)、

 

「このバイトっていつ終わるの?」

 

と聞いてくる。マナブくんは、

 

「午後9時30分。時間通りに終われるとは限らないけど」

 

と答えた。もし良かったら終わるまで待っててと言えたらまず待っていたと思うがあまりにも突然だったのでそんな気の利いた言葉は出てこなかった。次の受講生が来たらこの時カウンターにマナブくんしかいなかったので長話はできない。ユキコさんは、

 

「分かった。ありがとう」

 

と言って帰っていった。時間が来たがマナブくんはみんなに挨拶もしなければいけなかったので帰る時間は少し遅くなった。ユキコさんがもしかしたら待っているかも知れないと思って出口付近を調べたが待っていない様子だったので、そのまま帰ることにした。

 

 結局最後まですれ違った2人は恋人同士にも友達同士にもならずに卒業式を迎えることになった。ユキコさんとノリコさんはマナブくんの姿を見つけて「マナブく~ん」と呼んだらしいがマナブくんは気付かなかった。卒業式の日はゼミの謝恩会などで慌ただしく学生が多かったので個別につかまえることは難しかった。

 

終わりに

 決してユキコさんに魅力がないわけではなかった。マナブくんのことを良く思ってくれていることが分かっていたのになぜ議会に臨むときと同じようにできなかったのか、煮え切らない態度ですれ違いにすれ違いを重ねてユキコさんに辛い思いをさせてしまったのではないかと今でも考えてしまう。今でも鮮明に記憶に残るマナブくんの学生時代のほろ苦い思い出話である。

                                        (了)