小説「すれ違うふたり」第5話。 | てつさんのアスペルガー症候群奮闘記

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私は35歳でアスペルガー症候群と診断されました。今までの生き難さがなぜなのか少しずつですが見えてきました。週1回、子の刻に更新されます。

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第2章 すれ違うふたり

 

 7月の宴会で話も進んでいたのに連絡先の交換をしなかったユキコさんとマナブくんは接点がないままでお互いどうすることもできなかった。数日後にシンジくんとコウイチくんがマナブくんの下宿にやってきた。シンジくんが、

 

「あれからユキコさんには連絡した?」

 

と聞いてきたのでマナブくんは、

 

「いや、連絡先の交換していないからしてないよ」

 

と何事もないように言うと、2人とも驚いて、

 

「お前さあ、半日近くも一緒にいて連絡先の交換もしないなんて信じられないよ。今どき中学生でもするぞ」

 

と言われてしまう。これにはマナブくんも反論できない。ところがシンジくんとコウイチくんの2人は同じゼミで連絡網があるのでユキコさんの連絡先を知っていた。全く世話が焼けると思いながら2人はマナブくんの部屋の電話機を持ってきて、

 

「今からユキコさんに電話をかける。いつものマナブの勢いがあればこんなにいいチャンスはないぞ。俺たちは電話番号を押したらこの部屋からいなくなる。デートの約束くらい取り付けろよ」

 

と言う。2人はユキコさんの電話番号を押すと本当にいなくなってしまった。マナブくんは電話がつながらないことを願っていた。電話はつながった。

 

「はい、もしもし」

 

「ユキコさんですか?マナブです。こんにちは。この前は有難う」

 

「こちらこそ。でもなぜ私の電話番号知っているの?」

 

こんな流れになることは分かっていた。ユキコさんにとっては電話の主が本当にマナブくんなのかも分からない。明らかに警戒している。連絡先を聞かなかった自分が悪いことに気付いたマナブくんは、

 

「ごめん。シンジくんから聞いたんだ。僕の電話番号も教えるよ。ところでもうすぐ祇園祭の本祭りがあるから一緒に行かないか?」

 

マナブくんにとって初めてのデートの申込みだった。ただ祇園祭は人出がものすごく多いので女性が嫌がるデートコースだがちょうど1週間後だったので他に案が浮かばなかった。突然かけさせられた電話なので下調べもできない。ユキコさんは電話の主が本当にマナブくんであることは確認できたが、いくら気になっている相手とはいえまだ警戒していたので、

 

「その日は前期の試験があるからダメよ」

 

とあっさりかわされてしまった。マナブくんとしても突然電話しただけにこれ以上食い下がる訳にも行かず、

 

「分かった。突然電話してごめんね。またかけ直すよ」

 

と言って電話は終わった。そうしているうちにシンジくんとコウイチくんの2人が戻ってきた。どうだったか聞かれたのでマナブくんは、

 

「やっぱり突然の電話で警戒させてしまったみたい。祇園祭の本祭りに行こうと誘ってみたけどうまくいかなかった。その日は前期の試験があるって言われた」

 

と伝えると、シンジくんは、

 

「あきらめるのはまだ早い。これで連絡先はつながったのだからまたいつでもかけろよ」

 

と言う。マナブくんはユキコさんと学校で会うことは全くと言っていいほどなく、電話だけできるという関係に変わっただけだった。

 

                                      (つづく)