論語漫歩1010 『星の王子さま』 「野ばら」166  「再び第十一章冒頭に」 | キテレツ諸子百家〜論語と孔子と、ときどき墨子〜

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孔子、墨子をはじめ諸子百家について徒然なるままに語らせていただきます。

 前回我々は、論語漫歩1004「秘密」で突如出て来た「あの熱情的な少女が私の唇に与えた詛(のろ)い」がゲーテ自伝『詩と真実』第九章最終部の「ルチンデの呪いの接吻」であることを突き止めた。あの時、嫉妬に狂った美少女ルチンデがゲーテに激しく抱きつき、両手を彼の髪の毛に差し入れ幾度も幾度も彼に接吻して叫んだ、

「さあ、私の呪いをおぼえていらっしゃい。私の後(あと)に初めてこの唇に接吻する人には、いつまでもいつまでも不幸がつづく!」と。

 さて今回から、再び第十一章冒頭に戻ることにしよう。

「これから数日間の休暇は、歩いたり、馬に乗ったりして遊び廻り、しっかり英気を養いたまえ」

という、シュトラースブルグ大学医学部のエールマン教授の勧告に従って、ゲーテは、講義が終わるや否や、「焔」となって、夜道を馬で飛ばし、ゼーゼンハイム村に駆けつけた。

 フリーデリーケはこの突然の来訪を、インスピレーションで予知し、戸口のベンチで姉と一緒に待ち受けていた。再会を果たした二人は、翌早朝、絶唱「五月の歌」さながらの、光り輝く田園の散歩に出かける。我々は前にここまで読み進めてきた。

 この時、光り輝く野の美と愛と歓喜に満ち溢れた「五月の歌」が誕生し、更に、150以上の国語に翻訳され、世界中で愛唱されている「野ばら」(フリーデリーケ)が誕生した。こうして、これらの詩が、長い間フランス文学の亜流に甘んじていたドイツ文学を自立させ、世界のトップに立つ端緒となったという。

『詩と真実』第三部岩波文庫昭17p14

 

    私たちが家に戻って来たときには種々の方面の来客がもう賑やかに騒いでいたが、

   やがてフリーデリーケはその人たちを一緒にして、例の美しい広場へ散歩に出かけようとすすめて、案内していった。そこにはどっさり間食の用意がしてあって、人々は、社交的な遊戯をしながら、昼食の時刻になるのを待たせられた。

    このとき、私はフリーデリーケの同意を得て、といっても、私の肚(はら)の裡(うち)を彼女は感づきはしなかったが、罰金のない遊戯をし、また罰があっても接吻を除外するように仕組んで、それを押し通すことができた。