プロジェクトの失敗の仕方とイノベーション。 | Work , Journey & Beautiful

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これは中々面白い論文。

Innovator resilience potential


ミュンヘン大学の研究者達による、「プロジェクトの失敗の仕方」がイノベーションにつながるレジリエンスに影響を与えるという主張。


◾︎イノベーション分野で注目が集まる「レジリエンス」


イノベーションについて語る際に、近年重要視される一つのテーマが「失敗を恐れず挑戦の絶対量を増やせるかどうか?」。不確実性の高まり続けるビジネス環境において、成功することが分かっている打ち手はどんどん少なくなってきており、これは特に新規事業開発や新規商品企画といったイノベーションの分野で顕著。


だからこそ、チャレンジして失敗することは「前提」として考え、失敗しても次また新たに挑戦できるしなやかさ(レジリエンシー)がイノベーションを起こすためには不可欠。


このような文脈で、イノベーションの分野において「レジリエンス」という概念は注目が集まりつつある。そんな中、この論文では失敗プロジェクトの終わり方が関係者のレジリエンシーに影響を与える、という仮説のもと調査を行っている。



◾︎IRP(Innovator resilience potential)


本レポートでは、イノベーションに向けたしなやかさを、IRP(Innovator resilience potential)として定義しています。そして、IRPをより具体化した要素として、自己効力(Self-efficacy)、結果期待(Outcome expectancy)、楽観主義(Opmism)、希望(Hope)、リスク選行(Risk propensity)、自己価値(Self-esteem)の6つを上げている。


そして、これら6つの要素に対して、失敗プロジェクトの終わり方がいかに影響を与えているかを調査している。例えば、プロジェクトが、マネジメントサイドの事情で取り止めになるといった終わり方をすると、プロジェクトに参加していた個人は、「次もきっとまた中断される」といった結果を予測してしまうようになると結論付けている。


このレポートをざっと読む限りでは、個別の特定案件について関係者にインタビューなどをして、どのようなパターンであれぼどのような影響が生まれるかについて言及しているに過ぎず、まだまだ網羅性という意味では課題が残る。しかし、今後同種の調査結果が明らかになると非常に面白そうな分野ではないだろうか。


日本の大企業に、慢性的に漂う停滞感は、様々な挑戦をしてきたが成果に繋がらないことに対する自己効力感の欠如に起因している。上述したとおり、不確実性が高まり続ける環境においては、中々成功する一手を打てることはなく、失敗が蓄積することで自信をなくしてしまっている、と捉えることもできる。


しかし、プロジェクトを失敗したことが悪いのではなく、失敗のし方が悪いということが判明すれば、これらの倦怠感を払拭することも可能になるかもしれない。