研修の費用対効果測定は永遠の課題か? | Work , Journey & Beautiful

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先日、研修費用スリム化セミナーという名のセミナーに登壇し、主に費用対効果の最適化というテーマでいくつかの施策をプレゼンテーションをした。費用対効果の最適化を考える上で、費用対効果を測定することは最も基本的な要件である。なぜならば最適化を行うにあたって、効果測定ができなければ検証ができず、何をもって最適化されたのかがはっきりしないからである。要は効果測定ができなければPDCAがまわりようがないのだから、当然だ。



そもそも人材育成に関する様々な費用は将来に向けた投資である。その投資がどのような結果を残したのかを測定せずにいると、その投資がどれだけ価値のあるものであろうと業績や担当者の好みによってカットされても仕方がなくなる。



人材育成というのは専門家でなくても一家言持ちがちな分野であり、「この仕事には◯◯ではなく、△△が必要だ」「この仕事は何かを教わるよりもまずはやってみた方が早いんだ」といった発言によって判断が左右されがちである。何よりその内容がその人本人のユニークなものなのかどうか、本当に組織として投資すべきテーマなのか、手法として最適なのか、、、こういった内容如何よりもその発言主の立場や権限、声の大きさによって左右されがちでもある。事実、僕も人材育成・人材開発のプロフェッショナルとして様々なクライアントを担当してきたが、担当者が変わったり、人事担当役員が変わったりしたことを契機に、従前の取り組みが(あまり戦略的な根拠なく)否定されてしまうケースを数々見てきた。そこまで培ってきた人材開発の流れとも言えるものが断絶してしまうケースをいくつも見てきた。それもこれも、投資に対する効果がどの程度成果を上げているのかを明確にレポートしてこなかったところに原因がある。



一方で研修の費用対効果というテーマは中々に根深い課題である。研修ベンダー(業者)も思わずクライアントから「どうやって研修効果を測定しているのか?」と聞かれて、「受講者満足度はアンケートで測定できる。そして行動の変容は事後インタビューやアンケート調査で測定できる。しかしそれがどの程度業績に影響を与えているのかは、他にも色々な要素が絡み合うので容易には測定できない」と逃げ口上を述べがちな分野である。



ここで断言しておくが、研修の費用対効果(ROI)はある程度確からしい精度で測定することは可能である。研修費用対効果の測定は永遠の課題、などと言われたりするがそんなことはない。研修費用対効果の測定という分野で世界的な権威と言えばジャック・J・フィリップスだが、彼が2003年に発表した「ROI Best Practices」ではアメリカの主要企業100社のうち5%が研修のROIまで検証している、という調査結果が示されている。たかが5%と思うか、5%もと思うかは解釈のわかれるところではあるが、事実として10年前の時点でも既にROIまで測定している企業が存在する、ということを捉えると「研修費用対効果の測定は永遠の課題」などと言っている場合ではないことは明らかだ。



勿論、そのためにはいくつかの技術が必要だ。しかしそれも実は特別なものではなく、どのような組織であっても活用可能である。次回はとある日本企業で既に取り組まれている活動なども紹介しながら、研修費用対効果の具体的な方法について説明する。(続きます)