ベンチャー企業にビジョンは必要だろうか? | Work , Journey & Beautiful

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少し前置き。どの程度の規模の会社をベンチャー企業とするか、そもそもベンチャー企業の定義は何か?を考え始めるときりがないし、今回僕が書きたいことの本質とは関係がない。ということで、ここでは「ベンチャー企業=高度な技術・ノウハウ・知識をもって大企業にはできない革新的・創造的な経営をする中小企業」、ぐらいの意味でとらえておく。




一昔前(ベンチャーブームと言われた90年代後半から00年代前半)のベンチャー企業というと、熱苦しいまでに壮大なビジョンと野望をもっている経営者がいる、というイメージだった。


事実、僕が就職活動をしていた時(2002~2003年)、ベンチャー企業の説明会に行こうものなら必ず社長が出てきて、会社のビジョンなのか自分の夢なのか判別のつかない将来に向けた想いを話されたものだった。そして学生ながらにその想いの熱さに感化されたりしていた。


一方で最近のベンチャー企業の経営者というのは、(もちろん中にはユニークな人もいるけれど)あまり壮大な夢や目標ばかりを掲げようとはしない。というか、以前ほどビジョンを掲げるベンチャー経営者にスポットがあたらなくなっているような気がする。これは是か非か、を先日友人と話していたので簡単に考えをまとめる。


そもそもビジョンというのはある程度組織の骨組みが整備されていて、ある程度安定性が高まった段階でこそ必要となってくるもの。ベンチャー企業にビジョンが必要なのか?というといささか微妙だな、というのが僕の結論。


もちろん、企業として世の中にどんな価値を提供していきたいか?を明確に定義する必要はある。むしろベンチャー企業にとって、自分たちが社会に提供していく価値は何か?を定義することこそ、その会社の存在意義を定義するものであり、欠かすことはできない。でなければ規模的にどうしても環境の変化によって大きく影響をうけるため、企業としてぶれてしまう。


とはいうものの一方でベンチャー企業の場合、「●●年までに10億円の売り上げにする」とか「▲▲年までに上場をする」といったレベルのビジョンは描いたところであまり意味をなさない。(VC向けのパフォーマンスは必要だとしても)


自分自身ベンチャー企業に身を置いていて感じることだけれど、「吹けば飛ぶ」とはよく言ったもので、大企業と違ってベンチャー企業というのは外部環境の変化の影響をもろに受ける。市場の波にのれるかどうかこそが戦略そのものである。これだけめまぐるしく経済環境が揺れ動く中で、上記のようなビジョンを定義しても、達成できるかどうかはあまりにアンタッチャブルだ。むしろ目標達成に向けて、自分達がコントロールできる範囲などあまりに矮小だ。


人は、目標に向けたプロセスがコントロールできる状態にあるかどうかでモチベーションが左右される。(コントロールできる状態にある=継続的に頑張ればなんとか達成できそうだという実感につながる)


むしろビジョンを明確にたてることで上手くビジョンに近づくこともできず「負け癖」が組織に根付いてしまい、むしろ組織全体のモチベーションが低下する恐れすらある。


むしろベンチャー企業に必要なのは、激しく揺れ動く環境の中でも個々人がスピード感を落とさずに自律的に判断•行動できるようにすることだ。そのためには、判断の拠り所となる理念(自分達は何をする会社か?という定義付け)や価値基準(自分達は誰にどんな価値を提供するのか?という定義付け)が明確であればよい。これらが明確であれば、偶発的に押し寄せ続ける現実から価値を見出して組織の成長につなげることができる。






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