新「わたしの愛聴盤/曲」その9 P・コパンチンスカヤ チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲(CD) | 楽逍遥の友@鎌倉・湘南

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プロフィールのわたしの画像は、中国人の親友が作ってくれた“楽逍遥”の印章。カバー画像はネパールでヘリに乗ったときに撮影。

この曲・演奏は、旧「私の愛聴盤」で選んでいる。しかも媒体はCDだった。よく聴くようになったのは、3,4年前からである。それで、新「わたしの愛聴盤/曲」でも、そっくり選定対象に引き継ぐことにした。

 

録音:2014年 @ペルミ

2016年7月、輸入盤をベースに日本製品を発売(Sony Music)

新品も中古品も現在購入可能

 

選定・愛聴盤になった経緯、曲の説明、愛聴対象になった理由、聴いて感じる内容などの記事文もほとんど変えないことにする。

 

旧「私の愛聴盤」では、連載のトップに、ヴァイオリン曲系の「シャコンヌ/ミルシテイン名演集」を挙げた。わたしは、愛聴盤として、ヴァイオリン系がその後早く挙がってきてもいいと思っていたが、なかなか続くものが出てこなかった。

ミルシテインよりもかなり後の世代では、アンネ・ゾフィー・ムター、ジャニーヌ・ヤンセン、ナージャ・サレルノ=ソネンバーグなどの弱音部の演奏がいいなと思ったりしたが、さらに入り込めるところまでいかない感じだった。さらに若い世代には優秀そうなヴァイオリニストがたくさんいて目移りしている状態だった。

そんな状態の中で5、6年前から視聴していて、その音楽の世界に強く引き込まれてしまうという感覚を持てるヴァイオリニスト(&その演奏の姿)に出逢った。パトリシア・コパンチンスカヤである。今後、時々そういう機会がしばしばあり、その度に楽しい時を過ごせると思ったので、「愛聴盤」に加えることにした。

 

1.愛聴盤となったCDに出逢った経緯

(1)はじめての出逢い

TV音楽チャネル「クラシカ・ジャパン(2010年10月放送終了)」の2018年4月4日に「コパチンスカヤ『チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲』」という番組の放送があった。放送されたのは、彼女のフェドセーエフ指揮によるチャイコフスキーの協奏曲演奏だった。

ヴァイオリン:パトリツイア・コパチンスカヤ 東ヨーロッパ・モルドバ出身

モスクワ放送交響楽団(正式名称:「P・I・チャイコフスキー記念交響楽団」)

指揮 ウラディーミル・フェドセーエフ

収録 2011年 ヘッセン州立劇場(ヴィースバーデン) 「ドイツ・ラインガウ音楽祭」

この番組を視聴して、私はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の(さらには協奏曲そのものの)聴き方、楽しみ方について新鮮な体験をした。

コパチンスカヤはよく指揮者を見ている。それは当然なのだろうが、自分が弾いていないときにオーケストラをよく見ていて、その演奏に合わせて体を揺さぶったりしている。自分も一体となって音楽を創ろうとしているのが表情と姿勢に出ている。その姿を見るのが楽しく面白い。私は、こういう協奏曲のならでは楽しみ方もあることに気が付いた。

〇彼女の演奏は、自由奔放という感じだった。これまで聴いてきた他の演奏によってもっていたこの曲のイメージとは異なる躍動的で新鮮な印象を強く受けた。

〇放送番組の中のインタビューでコパチンスカヤは次のように話している。

『演奏には力が要ります。けたはずれな集中力を要します。あらゆる困難を克服して楽器から美しい音を引き出すのです。とてつもないエネルギーと それをうまく配分する知性がなければ弾けません。そして心を開いて弾くこと。同じく、心をこめて絶望的に感傷的に弾くこと。それが最良の方法と考えています』

私は、その言葉のとおりの演奏と感じた。

(2)CD盤との出逢い

放送番組で視聴したチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏が衝撃的といえる素晴らしさだったので、すぐに探したら同じ曲の彼女のCDがあった。

それが、今回の愛聴盤である。

パトリシア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン) チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲               

指揮テオドール・クルレンティス オーケストラ:ムジカエテルナ

 

2.愛聴盤となったCDを聴いた感想

・フェドセーエフ指揮のときよりも、コパチンスカヤの超高度なテクニックと驚くほど個性的な表現力とが合わさり、力強く発揮された演奏と思った。

・個性的という面では、音色やアクセントの変化、強弱、テンポの起伏などを自由に駆使している、カデンツァも新しくできた曲を聴くように感じる。

全体として、既存のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲演奏を「これまでの他のヴァイオリニストによる典型的演奏」とひとまとめにして比較対象にしてしまえるくらい「革新的」な演奏だと思った。

・バックのテオドール・クルレンティスの指揮/オーケストラ:ムジカエテルナも、よすぎるくらいに息が合って、上記のコパチンスカヤの表現と一体化している。両者もそれを楽しんで演奏しているのがわかる。

・コパチンスカヤはガット弦を張ったピリオド楽器(古楽器)を使用しているが、ムジカエテルナの弦楽器も同じ。それも音・演奏づくりで不可欠のプラスになっているだろう。

 

パトリシア・コパンチンスカヤ

画像出典 WIKLIPEDIA 

 

3.愛聴盤CDの情報

① 録音:2014年 @ペルミ

② 販売・購入

2016年7月、輸入盤をベースに日本製品を発売(Sony Music)

現在、新品も中古品も購入可能

③ 収録曲

2枚組で、ストラヴィンスキーのバレエ・カンタータ「結婚」も収録されている。

「結婚」の作品構成 第1部=第1場「花嫁の家」、第2場「花婿の家」、第3場「花嫁の出発」、第2部=第4場「結婚の祝宴」

編成 独唱4人(ソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バス)、4部合唱、ピアノ4台、打楽器

ムジカエテルナの刺激的でユニークな演奏を楽しめる。

 

演奏は今迄聴いてきたこの曲とは相当違う個性的表現で、テンポや強弱のアゴーギクがかなり激しいなど、強い印象が残る。