前回の投稿に続き
競争が強調される状況下での
影響を見ていきたいと思います。
前出の「無気力の心理学」(#106)の本の中で
興味深い実験が示されていました。
小学5年生の男児を対象とした実験で
2人がペアになって課題を解くことが要求され
競争条件では、2人のうち成績が良かった方が
「勝ち」となり、事前に勝った方に
ご褒美としてちょっとしたオモチャが
貰える事が告げられ
非競争条件では、勝ち負けはなく
研究に協力したお礼として2人ともに
オモチャが貰えることになっていました。
どちらの条件でも、1つ課題を解いた後
実験者から2人の成績が読み上げられ
実験場面についての感想を
いろいろな角度で質問する形式のものです。
その結果を少し長いですが引用したいと思います。
<自分や相手の成績をどう評価するかについての
結果も興味深いものだった。
これは、10個の金星を提示し、
それぞれの子どもに、自分は何個の金星を得るのに
ふさわしいと思うか、相手の子はどのくらいだと思うか、
とたずねたのである。
その結果は、競争、非競争の両条件とも、
成績のよかった者が、わるかった者より、
よりたくさんの金星をもらうのにふさわしいと
考える傾向があった。
これはある意味で、あたりまえの結果である。
注目すべきなのは、成績のよかった者と
わるかった者のあいだでの賞の差が、
競争条件のほうではより著しかったことである。
つまり、競争条件では、勝てば、
必要以上に自分をえらいと思い、
とてもたくさんの賞を自分に与える。
そして負けた者へは賞を非常に少なくし、
その価値をひどく低く見積もるのである。
では、自分が負けたときはどうか。
このときは、自分に与える賞を
ひどく少なくする。いいかえれば、
自分の能力のなさを必要以上に
責めるという傾向がみられた。
いわば、結果(勝ち負け)によって、
一喜一憂するのである。
非競争的条件では、そうした激しい
コントラストはみられなかった。
ここでみられた結果は、その後の研究でも
繰り返し確認されている。>(P78)
とあります。
競争という条件下において
私たちの自己評価がいかに影響を受けるか
ということが、これらの実験によって
明らかにされています。
振り返ると、私たちは
教育課程で常に評価にさらされ
順位付けという競争にさらされ
社会に出ては
会社の評価や成績での競争があり
その為に、自分自身に対する
正当な自己評価を
狂わせてしまっているのではないでしょうか。
#124にあるように
<ありのままの自分で、本来の自分で
情熱を注げる事、 挑戦し甲斐のある事に
チャレンジする>為には
他者と比べたり、競争する事から
距離を置くことが有効なのではないでしょうか。