「年が明けたら、職場復帰しようかな。」
そんなことをぼんやり考えていた、
ある日のこと。
私は、買い物に出ました。
運転中、ふっと左手が
ハンドルから落ちました。
「あれ?」すぐに握り直し、
「いかんいかん、注意力散漫。」
「運転に集中しないと。」
そう思いながら、
そのまま買い物へ向かいました。
買い物を終えた帰り道。
また、同じことが起きました。
ふっと、左手が
ハンドルから落ちたのです。
「……どうしたんだろう。」
少し気になりましたが
「居眠りしかけてたのかな」
そんな軽い気持ちで、
そのまま家に帰りました。
荷物を下ろすとき、
ほんの少し左手に
違和感を感じました。
気のせいかと思いましたが
気になり、
勤め先の病院を翌日
受診しました。
この違和感が、
脳転移のサイン
だとは思いもせずに。
頚部と頭のMRI検査後
MRIのデータと紹介状を渡され、
即行、肺がんの経過を見ている
病院受診を指示されたのです。
「何が起こっているの。」
と思いながら受診すると
MRIを見ながら、
主治医が言いました。
「脳転移だね~。」
「早かったね・・・。」
「説明はしていたよね~。」
私の思考が止まりました。
主治医が再び口を開きました。
「大丈夫だよ。」
「すぐに連絡するからね。」
「何が大丈夫なの?」
「脳転移って言ったよね。」
「もう終わりじゃない。」
「私の人生終わったわ・・・。」
「結局、人ごとだものね・・・。」
主治医は電話で、
受診調整をしてくれました。
「君ね、昼休みがあるでしょ!」
「明日行ってもらうから。昼休みに診なさい。」
「頼んだよ。」
そういうなり、電話を切りました。
紹介状を受け取りながら、思いました。
「私は明日、どんな顔していけばいいんだ。」
病気も心配でしたが、
明日の受診の方が、もっと心配でした。
帰り道、これからどうするか考えました。
「家族に、なんと言ったらいいのだろう。
特に子供たちに・・・。」と。
そして決めました。
「今日は黙っておこう。」
「明日の結果が分かってから、
何をどう伝えるかを考えよう。」と。
帰宅すると、
何食わぬ顔で家事をこなし、
いつも通りに就寝。
でも、眠れるはずがありません。
頭の中では「脳転移」という言葉が
ぐるぐる回っていました。
皆が寝静まったあと、
私はそっと起きだしました。
そして、台所に行き、
可燃ごみ袋を取り出しました。
一枚、二枚、三枚。
気づけば、10枚。
もう着ないだろう服。
読み返すことのない専門雑誌。
子どもに残してはいけないもの。
「あの世には持っていけないからな・・・」
そんなことを思いながら、
それまで捨てられずにいたものを
片っ端から袋に入れていきました。
本当に捨てたかったのは物ではなく、
「まだ死ねない」という気持ち
だったのかもしれません。
そして朝、起きてきた夫に
「これごみ。出してきて。」と
当然のごとく告げました。
何も知らない夫は、
10個の大袋を不思議そうな顔で
運び出してくれました。
そして昼前、
私は放射線外科の受付にいました。
「受診する意味がある?」と思いながら。
受付後、MRI検査に進み、
検査結果の説明を受けました。
前頭葉に直径6mm、脳梁に3mmの腫瘍
があると、伝えられました。
「やはり、人生終わったな・・・。」
とぼんやり考えていると、
「治療の準備をして帰ってもらいますね。」
とDr。
「えっ治療するの?]
「できるのここで?」
「開頭手術?」
「放射線外科だから放射線照射か・・・。」
「どっちにしても麻痺や障害が起きる・・・。」
「でもここ、入院設備ないよね・・・。」
自分の世界でぐるぐる回っていると、
「うちには、特殊な機械があります。
ピンポイントで放射線を当て、治療します。
脱毛も副反応も最小限です。」
と、夢のような説明。
そして、
「明日は、ご主人と一緒に来て下さい。」
と言われました。
クリニックの駐車場で、即行
夫に電話をかけました。
「明日休みを取って。受診に付き合って。」
「脳に転移してるんだって。」
「まだ、子供達には言わないからね。」
それだけ言って電話を切りました。
帰ると、なんと言ったものかという顔の夫。
「普通にしておいてよ!」
私はそれだけ言うと、
いつものルーティンワークを
こなしました。
でも、こころはどこかに
飛んで行っていました。
翌日、夫が一緒に説明を受けました。
画像を見せられ「それですか・・・」
と夫。
メモ帳を握りしめていました。
メモ帳をちらと見ると、
読み取れないミミズ文字が
のたうち回っていました。
説明を聞いた後、夫が言いました。
「治るんですね・・・分りました・・・」
「他人事だね・・・。」
心の中で、私は小さくつぶやきました。
説明後、
1回目の治療を受けました。
ドーム型の機械に固定され、
治療が始まりました。
耳元でトントンカンカン・・・
機械音が鳴り続けます。
痛くもかゆくもない。
小一時間程うつらうつらする間に
治療は終わりました。
気のせいか、頭が少しぼーっとしました。
そして後日、各2回の放射線の
ピンポイント照射を受け、
全治療は終了しました。
身体的負担がいっさいない治療。
安心すると同時に、
「ホントに治療したの…?」
という感情もありました。
副作用と言えば、
「照射部位に小指の先ほどの脱毛」
が、数週間後に起こったくらいでした。
「治療は終わったのだから、
ゆっくり年末を過ごそう・・・」
ホッとしたような、
どこかふわっとした気持ちで
帰路につきました。
そして娘と夕食を夕食を摂ろうという時に、
とんでもないことが・・・!!
続きは、
第14章 terubo86 まさかの失態!!
でお届けします。
🕊️ teruboのひとこと
この章を書きながら、当時のことを思い出しました。
その時見えなかった自分を、見つけることが出来ました。
脳転移を指摘された私は、「人生終わった」と思いました。
そして「自分のことで、いっぱいいっぱい」で、冷静に「これか
ら」を考えることが出来ませんでした。子どもたちとの日々の関わりがどうだったのか、全く思い出せません。それくらい「ジタバタな15年」を過ごしてきたのだと思います。
不安や迷いの中にいるあなたへ![]()
「ジタバタしている自分も悪くない」そう思ってください。
そのジタバタこそ、あなたが“生きようとしている”証です。
ジタバタしながらでも「自分の思いを口にして、周りや自分に
伝えていくこと」そして何よりも「それを自分自身が受け止める
こと」が、とても大事なことだと思います。
生命力を改善する方法![]()
自分の気持ちを言葉に出して、からだの外に出しましょう。
そして、そっと自分を抱きしめて「よく頑張ってるね」と、
優しく声を かけてください。
📖これまでの記事
🩺 第1章:告知の日、心が止まったあの日
💧 第2章:手術に向けて、涙と覚悟のあいだで
🌸 第3章:退院の日、思わぬ“自由”の重さ
🔥 第4章:抗がん剤治療に向かうジタバタな日々
🌈 第5章:抗がん剤治療開始の日。心の中で起きた小さな変化
第6章:抗がん剤治療が始まる カーテンの向こうから聞 こえ たエール
第7章:抗がん剤治療中、隔離される
第8章:つかのまの休息
第9章:2回目以降の抗がん剤治療で砕かれた自信
第10章:家に帰っても続く戦い
第11章:予想もしなかった治療最終日の出来事「予期嘔吐」
第12章 家庭復帰と職場復帰に向けたジタバタ
第13章 まさかの・・・脳転移!?
(↑今ここ)
terubo86に興味を持たれた方は、HP info@guchirian.com
も覗いてみてください。