焼き物の魅力は、陶芸家が作り出した色や形の中に自分の姿を投影し共鳴し合う時、離れがたい愛着心が湧きます。

焼き物のよさは形がよく、色がきれいで美しいということばかりでなく、使って使い易いという点にあります。元来焼き物は日常雑器として作られ、実用品なので、使い易く、長持ちし機能的なものでなければならないと思います。

たとえば徳利にお酒を入れ温める時に、お酒が冷めにくく器が持ちやすく、適度な重量感があり、お酒が注ぎ使いやすいものが望まれます。徳利の重量感は酒席に落ち着きを与えゆったりとした気分にさせ、間接的にお酒を旨くします。
また、花器ならば花を生けることができるだけではなく、花の美しさをひき立たせ季節感と瞬間の花の美を表現することのできる器という事だと思います。

 

        ◎ 作品名「樹想」 大きさ横30センチ・高さ32センチ

美の表現の仕方には焼き物であっても、創作の方法がいくつかあります。

しかし、私は土そのものに愛着があり、土をこねることが好きです。土がささくれ立ち、器にロクロ目が残り、窯の中で紅蓮の炎が土を焼き締める時、そこに新しい生命が宿り生まれます。これはまさに人間と自然の力が作り出す美の世界なのです。焼き物の魅力は、たとえば一種類の釉薬でも炎のあたり具合によって、多彩な色調の変化が現れるところがあります。
これを「窯変」と呼び、珍重されています。

 

         ◎銅釉窯変大鉢(高40センチ・径40センチ)

使い易いは美しいという美の考えかたを「機能美」と呼びます。大正時代に民芸運動の提唱者、柳宗悦はこう述べています。「工芸の美とは無名の陶工・職人たちによって無心で作られたもの、普通の生活の中で役立つものでなければならない。暮らしの中の道具でなければならない。これは民衆の工芸、民芸である」民芸運動は柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司等により提唱された文化運動です。

柳宗悦達は福島県の窯を訪ね民芸の素晴らしさを提唱し指導しました。会津本郷焼の宗像窯にも柳宗悦達が訪れています。