こんばんは。流れ星

 

 

早速ですが、考えてみたいと思います。

 

 

第54回試験・実技2・問1(3)

今回は地上天気図で沿海州北部の沿岸にある高気圧について、アムール川中流域の高気圧と異なり、850hPa面ではこれに対応する高気圧が見られないのはどういうことか、両者の高気圧の鉛直構造を比較した下の2行の文章の括弧にはいる適当な語句を穴埋めせよ、という内容の問題です。では問題文の下にある2行の文章を読みながら括弧の中に当てはまる語句は何か、考えてみることにします。

 

 

「沿海州北部の沿岸にある高気圧は、アムール川中流域の高気圧より背が(㋐)。」さてその下の枠内の「高い・低い」のどちらかということですが、まず地上天気図より対象になっている2つの高気圧周辺について上図の赤で囲んだ地点における気温を見てみますと、アムール川中流域の高気圧周辺は、中心から最も近い東側の北緯51°東経128°の地点で21℃、その南側にある北緯46°東経127°の地点で22℃、中心から南西側の北緯49°東経120°では19℃となっています。一方の沿海州北部の沿岸にある高気圧周辺は、稚内で15°、サハリン西岸のアレクサンドロフスクサハリンスキーで13℃、ラジオの気象通報でおなじみの沿海州の地点、ルドナヤプリスタニで15℃となっており、アムール川中流域の高気圧周辺の方が相対的に気温の高い領域になっていることがわかります。

 

 

次に上図の図4の850hPa面について、9℃、12℃、15℃の等温線をわかりやすく赤でなぞってみました。まずアムール川中流域の高気圧周辺の気温は、(3)②でも考察しましたように、中心付近に15℃の等温線が通っており、その周辺の地点の気温も15℃前後を示していることがわかります。ついでですが、気温の下に記されている数値は湿数(気温‐露点温度)を表わしています。一方の地上で沿海州北部の沿岸にある高気圧周辺にあたる地点の気温は、稚内で10.8℃、ユジノサハリンスクで11.0℃、アレクサンドロフスクサハリンスキーで12.8℃となっており、アムール川中流域の高気圧周辺で相対的に気温が高い領域であることがわかります。

 

ここで両者の高気圧とも中心気圧が1020hPaですので850hPa面との等圧面間の平均気温を単純に比較することができます。その結果、沿海州北部の沿岸にある高気圧周辺の等圧面間の平均気温が低いことがわかります。すなわち、等圧面間の平均気温が低いということは空気を構成する分子の活動が鈍く、空気密度が大きくなり、気体の状態方程式(p=ρRT)と静力学平衡の式(⊿p=-ρg⊿z

[)より等圧面間の高度差(層厚)が小さくなるため、沿海州北部の沿岸にある高気圧は、地上では認められるものの850hPa付近では認められないごく下層の背の低い高気圧となっているものと考えられます。したがって、㋐は低いということになります。

 

文を続けます。「これは、前者が後者に比べ、(㋑)ことと対応している。」とあり、㋑は何が入るかということですが、問1(3)のこれまでの考察で地上に見られる両者の高気圧について、850hPa面を見ると、アムール川中流域では地上高気圧に対応する高気圧が認められるのに、沿海州北部の沿岸では対応する高気圧が見られなくなるのは、大気下層の等圧面間の平均気温が、前者つまり沿海州北部の沿岸付近の方が相対的に低いからと考えられる、と結論付ける内容の文になっていることがわかってきます。そこで文になるようにあてはまる語句を考えますと、「大気下層の等圧面間の平均気温が低い」と書きたいところですが、解答欄が短いので難しいところですが、もう少しコンパクトに「㋑下層の平均気温が低い」になると考えます。気象業務支援センター解答例は「下層の気温が低い」となっています。

 

では。バイバイ