どこかでだれかが泣いている悲しい秋
Introduction
ここまで、福間健二は、映画の新しい語り方と魅惑を、主に女性たちの生きる「いま」のなかに探ってきた。長篇第5作となるこの『秋の理由』では、60代を迎えた二人の男の友情を軸に、この世の迷路の先でなお生きることへの「肯定」の炎をともそうとしている。
編集者の宮本守役には、石井隆監督の一連の作品や『百円の恋』などに出演している伊藤洋三郎。作家の村岡正夫役には、今年15年ぶりの監督作『バット・オンリー・ラヴ』で話題になった佐野和宏。ヒロインのミク役には、舞台のみならず映画『おとぎ話みたい』などで実力を伸ばしている趣里。そして村岡の妻美咲を演じるのは、数多くの名作に出演している寺島しのぶ。
原作は、2000年に出版された福間健二の同題の詩集。そのなかにある詩のフレーズが、生きることとこの世界への問いかけとなって、人物たちを動かしていく。どこかでだれかが泣いている悲しい秋。しかし、それに負けない美しい光を映画『秋の理由』はとらえている。