こんな夏休みもありました | 『いい加減、いい湯かげん。』〜寺山鉱泉旅館六代目女将〜

『いい加減、いい湯かげん。』〜寺山鉱泉旅館六代目女将〜

寺山鉱泉旅館、六代目女将の気ままなブログです。今を遡ること、160年。江戸時代の末期に創業された、小さな湯治場に嫁に来てまもなく30年ほどになります。山と川に囲まれた一軒宿での日々の手造り暮らし、つづってみようと思います。HP【http://www.terayama.burari.biz/】

私が小学2年生の頃 1964東京オリンピック が開催される 50数年も前の夏休みのことです

姉が昆虫標本を作るセットを買ってきました
セットといっても 薄っぺらい箱に 注射器と 注射液が入っているだけのものでした

早速虫集めに取り掛かりました
オニヤンマや シオカラトンボ、アゲハなどは 家の庭で簡単に取れました カブトムシも 外灯 の側を見れば 容易に捕まえられたので 山に取りに行く虫ではなく 勝手に飛んでくるかなり大きい虫だと思っていました

捕まえた虫は 注射液を入れた注射器で刺していきます 虫のどの部分を指すかは適当で さしどころが悪いと 液が入らず 虫の背中に タマ状態で液が戻ってきたりもしました
お姉ちゃんばっかりずるい私にもやらせて とか言っていたのではないでしょうか
そしてお菓子箱に脱脂綿を敷き 虫ピンならぬまち針で 一応止めておきました

次の日から 別の虫を捕まえようと 近くのケヤキの木のところまで行きました
いました アブラゼミです
地上から1メートルか1.5メートルの高さで ケヤキの幹に止まっていました そーっと近づいて 素手でキャッチしたことも何回もあります
手の中で羽をバタバタさせて ジージーと鳴くアブラゼミを虫かごに入れて帰ってきました

次の日も同じくらいの時間に 同じ木の所に行きました するとまたアブラゼミが 同じような所にとまっています また捕まえてきました
かれこれ10日間ぐらいは続いていたように記憶しています
取りに行くのをやめたのは 注射液がなくなったか 注射針が壊れたのかのどちらかでした
「 なんだ、またアブラゼミか でも何で同じ場所に毎日アブラゼミがたかっているんだろうね」
と不思議に思いました
本当はその疑問を解き明かすことこそが自由研究なのでしょうが:
幼虫が地面の中にかなり長く眠っているぐらいは聞いていたので 木の周りの地面をよく見るとか そして24時間の間に何が起こったのか 観察してみるとか 
そういった探究心はさらさらなく 単に注射をするためのセミ捕りだったんですね
その頃自由研究は 宿題ではなく、するもしないも 自由でした

塾もプールもなく、ただただ時間だけはたっぷりある頃でしたから 朝早くか 夜見に行くとかすれば 幼虫が地上に出てきて欅の木の幹にとまるまで そして羽化するところも 見ることができたのでしょう
よって夏休みが終わりになる頃には お菓子箱の虫たちは 異臭ととも カビてしまっていたのでした

それにしても あの 注射液の正体は何だったのか 成分表示も 取扱説明書もなかった頃なので わかりません
その頃は何か痛い思いをしても 自分が悪かったためで ほとんどが自己責任ですから クレームを言う という意識すらなかったように思います
現在は品質表示や取説 消費期限は当たり前のことですが 1日に1台ぐらいしか 自動車を見ることがなかった 50数年前は 生活様式も社会も相当に変わるものだと実感します


7月初め 宿の周りは ひぐらしの声に始まり アブラゼミ そしてミンミンゼミや ツクツクボウシの鳴き声に変わり そろそろ夏の終わりを告げようとしています