イスラエルの読書療法⑤
イスラエルの読書療法④のつづきです。
ただ、自分より高齢の方が活躍しているのを知って、励まされるのではなく、むしろひがんでしまうこともあるそうです。「この人はこんなことを成し遂げたけれど、自分は何もしていない」と比較して落ち込んでしまうのです。
ここで話題になったのは、「すること」と「存在すること」の違いです。ある程度の年齢になれば、「存在すること」自体が大切になるはずなのですが、いまの世の中では何かを「すること」がすごく評価されるようになっています。
もちろん歳を重ねても元気で活躍できるのは素晴らしいことですが、当然ながら誰もがそうできるわけではないですし、九十代になっても、百歳を過ぎても、いわば超ハイスペックであることを求められるのは相当にしんどいことですよね。
何かをすることだけがあまりにも評価されてしまい、存在することに重きを置かれなくなってしまうのはどうなのか……。これはパーソンセンタードケアにも関わる話で、先日翻訳を終えた本の中でもまさにこのことが取り上げられていました。引き続き考えていきたいテーマのひとつです。
最後にもうひとつ、印象的だったお話を。探偵小説が好きな人がいて、なぜ好きかというと、最後には全て謎が解けるからなのだそうです。現実の世界では理解できないことも多いし、コントロールできないことも多い。だけど探偵小説はある種の万能感を与えてくれるのですね。
以上、イスラエルの読書療法家Sheffiさんから伺ったことや話し合ったことを書かせていただきました。正式な質問表とその回答については、追って日本読書療法学会のサイトに掲載いたします。