おいらのイケメンは、とにかくタフ。
……夜もタフだけど。
そっちだけじゃなくて、日常がもうすでに超人的。
おいらには到底無理~。
無理ってかスケジュール見ただけで、熱でそう。
過密スケジュールって言葉、翔君、知ってる?
過労とか……。
おいらだって、今年は忙しく働いてるけど、そんなの翔君と比べたら!
今日だって、歌番組に出るおいら達。
みんな揃って行くのかなと思ったら、翔君はニュースの打ち合わせだって。
出れる限り、打ち合わせにも出席する翔君。
きっと翔君の中はキャスターモード。
鋭い指摘とかしちゃってさ、
番組の流れや、メインキャスターの意図とか、ちゃんと組んじゃったりしてさ。
パッキパキにできる男で頭の中もフル回転。
打ち合わせを終え、戻って来た翔君は楽屋に入って来る時からアイドルモード。
ちゃんとリハにも参加して、でも、メイクしながら、片手に夕刊。
体も頭も動きっぱなし。
で、本番もアイドルスマイル全開で。
終わったら、すぐに移動。
アイドルモードからキャスターモードに切り替わって。
家に帰って、テレビを点ける。
イケメンキャスターが爽やかに笑ってる。
お~い、翔君、君は疲れないのかい?
おいらの心の声、フル回転の翔君には届かないのかな。
最後のお辞儀のところまで、翔君は疲れた顔を見せず、爽やかで……。
じっとソファーに座って見ていたおいら。
大画面がCMに切り替わって、リモコンをポチッと押す。
テレビを切ったら、一気に静かになる部屋の中。
ポケットから携帯を取り出して、
忙しい翔君に、いつものようにメールを送る。
「今日もイケメてたよ。」
今日は、何時に帰ってくるのかな?翔君?
……ちゃっちゃとシャワー浴びちゃおう。
おいらは携帯をソファーに投げて、バスルームへ向かう。
「智君……。智君?」
体を揺すられて、ん~と薄目を開ける。
目の前にはいつものイケメン……。
「ぁ……。」
目をゴシゴシ擦って、霞む目を覚醒させる。
でも、しっかり覚醒してくれないおいらの目。
「ぉかえり……。」
「ただいま。」
翔君がおいらのおでこにキスをして、カチャカチャと腕時計を外す。
「……今日もイケメンだったよ。」
クッションを握りながら、小さな声で言うと、翔君が爽やかに笑う。
まだ、キャスターモード?
「ふふ。ありがとう。」
時計を棚の上に置いて、ソファーに戻ってくると、寝ているおいらの腰の辺りに座る。
「……疲れない?」
「……ん?」
キャスターモードの残った翔君が、おいらの髪を撫でる。
「髪、乾かさないで寝たでしょ?寝癖すごっ。」
翔君が笑いながら、寝癖を直そうと撫でつける。
「ほら、ソファーで寝ると、ひじ掛けでてっぺん平らになっちゃうから、
また松潤に言われるよ。」
徐々にキャスターモードが薄まる翔君。
髪を撫でる手を掴んで、指 先 を 絡 める。
「何?どうしたの?」
翔君の顔が、近づいてくる。
「そんなに仕事して、疲れない?」
「ん?そうでもないよ。」
翔君の笑顔が、爽やかから優しい顔に変わる。
「絶対おいらにはできねぇ!」
「智君だって、ずっと撮影続きで大変じゃない。」
「そうだけど……、あっち行ったり、こっち行ったり、
そのたんびに、頭の中切り替えて……わかんなくならない?」
「わかんなく?……そうだね。なる時もあるけど……。」
「ほら!無理すんなって、いつも言ってるのに。」
「わかんなくなるのは……。」
翔君の顏が、おいらの顔、寸前で止まる。
「智君のこと考えてる時……。」
「な、何言って……。」
翔君の 唇 が、おいらの 唇 に 重 なって、
柔らかい 触 感 が、おいらの 唇 をムニュムニュと押し広げる。
「疲れてくるとね……智君のこと考えちゃうから、ハッとすることがある。」
翔君は包み込むような笑顔で、おいらの 唇 を 甘 噛 みする。
「しょ、翔君、モードの切り替え、得意だろ?」
「得意だよ……、だから、なんとかやってるんだけど……。
智君モードだけは、勝手にスイッチ入っちゃうから……。」
「なんだよ、智君モードって。」
おいらが口を尖らせると、その先に、チュっと 唇 を当てる。
「智君モードってネーミング嫌い?
じゃ、違うのにするよ……。そうだな。
……恋人モード?」
翔君はそう言って、おいらの上にのしかかる。
「しょ、翔君……疲れてるのに……。」
「だから……癒して?智君……。」
翔君がおいらの胸の上に頭を乗せて、じっとする。
家に帰って来た時くらい、全て取っ払って、無になって欲しいな。
翔君。
おいらは、翔君の頭を撫でながら、そっと囁く。
「おかえり……翔君。
今日最後は……全て忘れて……。
赤ちゃんモードでもいいよ?」
おいらがショウ君の頬を親指で撫でると、翔君がちょっと上目遣いで、あははと笑う。
「赤ちゃんモードでちゅか?」
「そうでちゅ。赤ちゃんなら、無になれるだろ?」
笑う翔君。
「じゃ、智君はママでちゅね?」
そう言って、翔君が、おいらの 胸 に 齧 り付く。
「え……?」
「智ママ、お っ ぱ い 欲しいでちゅ。」
「ぁ……あんっ。」
翔君がTシャツを捲り上げる。
「ちょ……ぁんっ……それじゃ疲れが……。」
「んぷぷ。これが一番疲れがとれまちゅ……。ついでに淡泊も摂取できれば……。」
淡泊って……!
おいらの顔がカァッと熱くなる。
思いっきり翔君の頭を叩いて怒鳴る。
「翔君っ!」
これじゃ、全然、疲れ取れないじゃん!
翔君はクスッと笑って、おいらを見上げる。
「智君とのスキンシップ……それが一番の癒しだから……。」
翔君がおいらの 肌 に 吸 い 付 いて、おいらも翔君の 肌 を 撫 でる。
はぁ……体は余計疲れそうな気もするけど……。
頭と心の疲れは取れるかな……?
「ママ、僕の、大変なことになってまちゅ~。」
…………ダメだ!
翔君の疲れが取れても、おいらの方が疲れそうだよ。