選挙物語・6 | アトラス塩浜のブログ

選挙物語・6

選挙物語・6

前回に続き、高校中退西川やすし候補(仮名)の区議会議員選挙の話。
西川やすしは、同級生に体罰を加えた教師をぶん殴って高校中退。土方や日雇いの仕事をしながら政治の勉強を続けました。
 
 彼は、「無所属新人」という名前の政治団体を作って届け出ました。
普通は無所属というのは政党に入っていない人を指す「普通名詞」であって、政治団体の名前、「固有名詞」に無所属とつけるのは変です。
 が、いろいろ考えると、このやり方、一番うまいのです。

無所属の長所。世の中、既成政党にうんざりしている人がたくさんいます。そういった層には無所属をアピールした方が良い。

無所属というか、政党や政治団体に入らない場合の短所。事前の運動が弾圧されやすいのです。

区議会選挙は実はたった1週間。
1週間で区民みんなに自分を知ってもらうのは無理です。
ただ、「選挙運動」の期間が一週間なのであって、「政治運動」ならばその前からやって良いのです。

「選挙運動」と「政治運動」はどこが違うのでしょうか。
小学生なら「字が違う」と答えるかも知れません。
「次の区議会議員選挙で私に1票入れてください」というように、投票を呼びかけるのが「選挙運動」で1週間だけ。
「原子力発電はこういう理由で良くない。廃止せよ」と政治的意見を訴えるのが「政治運動」でいつでもどうぞ。

では、投票依頼さえしなければ絶対大丈夫かと言うと、チラシにやたら大きく写真や名前を入れていると、「政治運動に名を借りた選挙運動だ」とみなされ、違反とされることがあります。

ここで羨ましいのが大政党の候補。
政党にはそれぞれ機関紙というものがあります。有名なのは共産党の赤旗。自民党なら「自由民主」。民主党は「プレス民主」。
候補予定者の写真やプロフィールや名前が大きく出ていて、政策なんかほとんど載っていないチラシを配って、これが無所属ならばたちまち違反とされるところ、「いや、自由民主の号外です」「プレス民主の号外です」「赤旗の号外です」
そして、「これは選挙運動ではなく、政党の機関紙の宣伝用に号外を配っているのです」で済むのです。羨ましい。
いわば、「××号外」という文字が魔よけの呪文なのです。

では、大政党に属していないとだめかというと、少しは効き目が弱いけれど魔よけの呪文があります。
政治団体を作って届け出て、その政治団体の機関紙を配るという手です。

大前研一氏の「平成維新の会」の流れをくむ「都議養成スクール」の受講生が8名1997年の都議会議員選挙に出ました。うち2名は民主党なので問題ないとして、無所属6名がチラシを配りやすくするため、「NEXT」という団体を作りました。

ところが、これはこれで、今度は「なんだ、無所属ではないのか」とがっかりする人が出てきます。それどころか、変に無名の団体だったりすると、かえって怪しまれる面もあります。

団体がないとチラシを配りにくい。
団体を作ると無所属が好きな人の票が逃げる。
あちら立てればこちら立たず。

ここで西川やすし候補は、「無所属新人」という名前の政治団体を作るという、普通では考えつかない必殺技に出ました。
なんというアイディアマンでしょうか。
後、参議院の一部の議員が、同じ悩みからか「無所属の会」というものを作りましたが、西川やすし候補の方が先です。頭良い。

最後に、アニメ「巨人の星」で、差別用語だとして不当にも削除されている名セリフを使って彼をほめましょう。
西川やすしは、日本一の日雇い人夫だ!