首かしげ沈黙 通用しない
異文化の中に身を置いても、自分の考えを恐れずに英語で発信していける子を育てようとするスポーツ教室がある。
2005年10月開設の「e―kids」は、東京都新宿区周辺の貸しスタジオや小学校校庭などで指導している。
「We are sweating a lot(たくさん汗をかいた)」。クラスをのぞくと、幼稚園児や小学生19人が汗だくで、キャッチボールや体操をしながら、自分の今の気持ちや行動を英語で話していた。
「声、小さいぞ!」。空手着姿の窪田豊彦代表(37)が叱る。自分が話す順番が来ても黙って首をかしげていた男児に、カミナリが落ちた。「わからないなら『わかりません』と言わなければだめだ!」
「わかりません」。男児が泣き顔で答えた。英語を間違えてもいい。しかし、恥ずかしがったり、ごまかそうとしたりしても、海外では通用しない。勇気を持って自分の考えを伝えるよう指導する。
「現在の子どもは、首をかしげれば親や先生が、すぐ答えを差し出してくれることに慣れてしまっている」。指導後、窪田さんが解説してくれた。「困った表情をいくら浮かべても、米国はチャンスを与えてくれません」
窪田さんはアメリカンフットボールにあこがれて自ら願書を送り、1994年、米国の大学に留学。アメフト部に入部するために、コーチに直談判した。留学から帰国後は、プロボクシングなどに挑戦。引退を機にこの教室を開いた。
教室の開設当時、東京都内の小学校で英語活動のアシスタントとして教えた。児童が相手の目も見ずに「I’m fine(元気だよ)」とつぶやく姿に衝撃を受けたことが、現在の指導スタイルに結びつく。「授業態度が受け身で、何を言われても『無理』が口癖。いくら勉強ができても、これでは世界で通用しません」
厳しいだけの指導ではない。子どもが課題をやり遂げると窪田さんは「Good job(よくやったね)」と語りかけて抱きしめる。「先生は厳しいけど楽しい」「英語が好き。外国の人とも話せたよ」「強くなれた気がする」。つい先ほどまで、べそをかいていた子まで笑顔で言い合った。
教室には小学生を中心に約50人が通う。長男の
世界で活躍できる人材育成の要は、「根性」なのだ。(伊藤史彦)