仕事が遅くなって終電になってしまった。
コロナ対策で乗客はみんなマスクをしている。
みんな疲れた顔でスマホを見ている。
ニュースでも見ようと私もスマホを取り出した。
そのとき隣に座って居眠りをしていた子に突然話しかけられた。

「ここは夢の中ですか?」

「はあ?なんですか?」
高校生ぐらいの若い子だ。

「私家で寝てたんですよ、目が覚めたらここに居るなんて、あり得ないですよね!」

彼女はスマホを取り出して時間を確認している。
「こんなのあり得ないよ、これ終電なんでしょう?」

「そうですね、これは終電です。」

何寝ぼけてんだよ・・そう思いながら私が聞いた。
「いま目が覚めたんなら、あなたはどこでいつ寝たんですか?」

「今日の夕方です。学校から帰って勉強してたら睡魔に襲われて、寝てしまったんです。で、目が覚めたらここなんですよ。ここって夢の中なんでしょう?じゃなかったらこんなのあり得ないし・・」

私は吹き出しそうになるのをこらえながら聞いた。
「ここが夢なら私はあなたの夢だってこと?」

「いえ、ここが夢なら私は自分の部屋で寝てるってことです。」

「いや、待ってよ。ここがあなたの夢の中ならこの電車も私もあなたが頭の中で作ったってことでしょう?そっちのほうがあり得ないでしょうよ。」

「じゃあ、どうして私はこんな所にいるんですか?」

「そんな事、私は知りませんよ。私は仕事で遅くなって終電に乗ったんです。これから・・・」
これから・・・
まてよ・・これからどこで降りるんだっけ・・
頭がぼんやりして、降りる駅名が思いだせない。
なんでだろう・・
彼女を見ると、体が半分透けて消えかかっている。
他の乗客も電車もだんだん薄れて・・消えていく・・
 

 

「俺たちは親子って事になってるから、そういう雰囲気でね。」「うん、分かった。」

エマは旅館は初めてだということで何にでも感動する。とくに温泉旅館の豪華な夕食にはビックリしていた。

食事の後、私はフロントに電話をして「部屋飲みしたいからワインと何かツマミをお願いしたいんだけど、、あとね、娘に何かケーキのような甘い物でも、、あと、コーヒーでも頼めるかなあ。」と注文した。

 

中居と女将にチップを渡してあるので何かと対応か良い。

仲居は注文した物をテーブルに置くと

「それでは後はお呼びが無いかぎりこちらには伺いませんので、どうぞごゆっくりなさって下さい。」と、意味有りげにエマの方を見てニコッと微笑んだ。中居が部屋を出ると

「ねえ、いまの人、私らを親子だと思ってないよ。何かいやらしい目付きだった。」と言って笑う。

 

私達の宿は大きな河川に面していて窓から見える夜景が美しい。温泉のお湯で川の水温が高いのか、川いちめんに湯気が立ちこめている。

ワインを飲んだせいでエマの肌はほんのりサクラ色だ。エマは私に寄り掛かり窓の外を眺めている。フワリフワリと雪が舞いながら落ちて来る。その雪を眼で追いながらエマがしみじみと言う。

「パパと出逢ってなかったら今頃スーパーのトイレで死んでるよ私。あの頃ね、パパに抱いて欲しくて必死だった、、だって抱いてくれないとパパに着いて行く権利が無いでしょう。」と言う。

「今は十分に権利あるよな。」と私が言うと

「パパと家族になる権利ってある?」と聞く。

「そうだね、、もしエマが妊娠したら、その時は入籍しようかと思っている。俺みたいなジジイで良ければだけどね。」私がそう言うと

「ほんとに! それプロポーズだよね! でも私ガキだよ!何にも知らないし何にも出来ないよ。それでも良いの?」と言う。

私は「そのままで良いよ。」とエマを押し倒しキスをした、そしてお酒で上気したエマの身体に唇をはわせた。エマは直ぐに反応し切なそうに喘ぎながら

「妊娠させて、、」と言った。

 

エマは愛し合う度に感じやすくなり、いつ誘っても素直に応じてくる。それどころか最近では「パパの為なら何でもするよ、絶対イヤって言わないから、好きにして良いよ、、」と意味深な事を言う。私は冗談半分で「じゃあ全裸になって、、」と言うとエマは素直に服を脱ぐ。私は浴衣の腰紐でエマの両手を前で縛り布団の上に横たえた。「エマ、もっと股を開いて、、」エマは私に見えるように足を開いた。

私はエマのそばに行きそっとキスをする。エマは潤んだ瞳で私を見ながら「何でもするから、、」と誘うように言う。

 

私はエマをSだと思っていた。そう思わせる雰囲気があったからだ。しかしそれは昼間の顔だった。最近のエマは夜になると奴Mに変身する。私に全てを投げ出し、私に支配され、私に屈辱されるのを望むのだ。しかしそれはエマの、、女王様としての望みであり、私は彼女の望むような支配者でなくてはならない。彼女の望むストーリーが有り、彼女の好む支配の仕方が有り、彼女の望む虐めかたがあるのだ。私がそれを満たせば、彼女は淫乱なM奴隷に変身する。そしてお互いに、決して人には見せない心の神秘に触れ合うのだ。


 

「エマは来年の4月で成人になるんだぞ。」「え! どうして?」

「法律が変わって18才から成人になるんだよ。もう親の承諾無しで免許も取れるし車も買えるし結婚だってできるんだ。」

「そうなの?  じゃあ結婚しようよ。パパと家族になりたいよ。」

「それは無理なんだ、、エマがエマである事を証明する物がないと、、エマは車の免許とかマイナンバーカードとか保険証とかさ、、自分をエマだと証明する物を何も持って無いだろう?!」

「えー、、じゃあどうすれば良いの?!」

 

「お母さんに電話してエマの住所の転出届を出して貰って、その次に転出証明書を取って貰って、それを俺の住所のある松江の郵便局止めで送って貰いたいんだ。つまりエマの住所を松江の俺の住所に移すんだよ。」

「それだけでいいの?」

「そう、後はエマが転出証明書を持って松江の役場に行って転入届を出せばエマの住民基本台帳が松江市に移るから、後は住民基本台帳カードを作れば運転免許証と同等の身分証明になるんだ。」

「じゃあ、私の住所をパパの所に移して貰えば良いのね。」

「お母さんに、正月明けに手続きをして貰うようにたのめるかなあ。」

「頑張ってみるよ、でもやってくれるかなあ、、」と言ってエマは暗い顔をしている。

 

エマが緊張した表情で電話をしている。

「もしもし、私だよ。そう!エマだよ。うん、、うん、それは大丈夫。うん、、、

うん、大丈夫だよ。 今  好きな人と旅行中なの、、うん、。うん、良い人だよ。お金は心配いらないから、大丈夫。うん、、、、そんな事思ってないよ。 違うよ、、お父さんは辞めようって言ったんだよ。私がバカだから、、お父さんとお母さんには仲良くして欲しい、、ほんとうに?! うん、、、そう、一緒に居る人と結婚したいの。だから私の住所を島根の松江市に移して転出証明書を取って欲しいの、そうなんよ、それが有ったら結婚出来るから、うん、詳しい住所はショートメールで送るよ、そう、この電話だから、、うん、分かった、時々電話する。うん、じゃあ又電話するから。」

電話が終わるとエマが私に説明をする。

 

「転出証明書送ってくれるって、、お母さん、怒ってなかったよ、私の事心配してたって。お父さんとも仲良くしてるみたい、、良かった、私  お母さんの幸せを壊したと思ってたから、、」そこまで話すとエマは急に顔を歪め泣き顔になった。

「エマ、  おいで!」

私がそう言うとエマは駆け寄って来て私の肩に顔を押しつけた。

「よかったな、エマ。」私がそう言うとエマはうんうんうなずいて泣いた。

 

「エマ 、 松江の俺の家に行こう、エマの新しい住所だ。俺、仕事を再開するよ。」

「私にも出来ること有るの?」

「もちろん有るよ。やって欲しい事がある。」

ホームページで事業再開を告知しよう、、取引先は待ってくれてるはずだ、、店の方はエマに任せよう、、多くの人に迷惑を掛けている、、

1人づつ会って謝ろう、、私の頭がクルクル回り、私本来の回転数を取り戻してきたようだ。

 

「エマ、約束して欲しい事があるんだ。俺はエマより30才も年上だから、、俺が亡くなる時は言って欲しい、パパと一緒に暮らせて幸せだったよって。それを約束してくれ。」

私がそう言うと

「ダメ!! 女王様に一生  奴隷になるって誓ったでしょう。私が許可してないのに勝手に死ぬなんて、それは絶対 許しません!」と、エマはサラリと言ってのけたのだった。

 

 

翌日は、はっきりしない冬空でドライブ日よりでは無かったが、今治から尾道までのしらなみ海道を一気に走った。島々を繋ぐ道路には、いろいろな様式の橋がたくさん掛かっている。次々と現れる美しい橋にエマは興奮気味だ。

私のスマホで写真を撮りまくっている。

それを見ながら私は思った。そうだ、エマにスマホを買ってやらなくちゃ。今どきスマホが無いなんて人間とは言えない、ありえない事だ。

私はネットで新規にもう1台スマホを注文し、立寄る予定の長門市のドコモショップで受け取れるように手配した。

 

尾道からは秋吉台を通って長門市へ向かうのだが、途中 、秋吉台に有る 道の駅おふく に立ち寄る事にした。

「道の駅おふくは、温泉施設が併設された珍しい道の駅なんだ、車中泊も受け入れてくれるし、ゴミ箱も設置されてるんだよ。」と説明すると

「凄〜い!車中泊に優しいのね。車中泊お断りの道の駅も多いのに、おふくは神駅なんだね!」とエマが言う。

最近車中泊で旅をするのがブームになり、ゴミ問題などで車中泊をする人と道の駅とのトラブルが増えているらしい。

そこで車中泊に対する道の駅の対応が(鬼道の駅)と(神道の駅)に別れたのだ。”鬼道の駅”はゴミ箱を撤去し車中泊お断りの張り紙をしたのだが、”神道の駅”は駐車スペースを増やし、大きい分別ゴミ箱を設置して、自動販売機の種類も増やしている。中にはキャンプサイトを併設している道の駅もあるのだ。

 

この対応の違いで道の駅の未来が変わるような気がする。人を排除すれば自らが排除される、それが世間の道理というものだ。

尾道から”道の駅おふく”までは、かなりの距離がある。まず広島に行き山口県に入って山口市から秋吉台に入る。その秋吉台に道の駅おふくは有るのだ。

道の駅おふくは山間部に有った。周りが水田や畑に囲まれた可愛い道の駅だ。私達は、おふくの駐車場で1泊し温泉に入ったり道の駅で食事をしたりしてゆっくりと過ごした。そして翌朝次の目的地 長門市に向かった。

 

長門市は日本海側に面した、人口3万人ほど小さな町だ。私は長門市の中心街に着くとドコモショップに行った。そして注文していたスマホを受け取った。スマホはSiMがさしてあり設定も済んでいて通話出来る状態だった。Androidスマホなので後はGoogleアカウントの作成だけだ。

 

「はい、エマのスマホだよ。俺からのクリスマスプレゼントだ。」そう言ってエマにスマホを渡した。「凄い!パパ、ありがとう!」エマの目が輝いた。スマホを受け取ると夢中になってLINEなどの設定をしている。

「アプリなどの支払いは俺のVISAを使えばいいからな。」

VISAカードを渡すとエマは設定にVISA番号を入力する。そしてお互いの連絡先を登録をし、LINEを繋ぐ。

「嬉し〜い!パパと私が繋がったよ。なんかリアルな感じだね。」とエマが微笑みながら言う。

「そうだよな。スマホでの関係が切れたら男と女は終わりって事だもんな。」

と私が言うと

「これで、パパが居なくなってもすぐ探せるね!」と言って嬉しそうに私を見る。

 

「実はね、正月は長門湯本温泉に予約を入れてあるんだ。明日の晩にチェックインして来年の3日までゆっくり出来るんだ、飯付きなんだぞ!」とエマに知らせると

「え〜、そんなに?お金大丈夫?!」と心配そうにエマが聴くので

「俺はね、お金が無くて車中泊してるんじゃあないからな、、」と言って笑うと

「パパってお金持ちなの?」と聞く。

「そうだなあ、5ー6年は遊んで暮らせるぐらいの貯えは有るから・・エマはお金の心配はしなくていいよ。」と言うと、

「うっそ!  大金持ちじゃん!!」と大袈裟に言って目を大きく見開いた。

 

静岡に入った。

三保の松原に立ち寄って、駿河湾と富士を背景にエマの写真を撮る。

エマは体型も良いし笑顔が可愛い。

私の求めに応じてカッコつけたり、ひょうきんなポーズをとる。

とても可愛い!  私は、エマへの好き!が止まらなくなる。

私は47歳になる。エマとは30才の年の差なのだ、、

私はエマのそばに行ってハグをした。

 

ハグが強過ぎたのか「どうしたの?」とエマが聞く。

「お前、可愛い過ぎるんだよ!」と私し。

「私を好きになってしまったの!」と冗談ぽくエマが言う。

「もうメロメロで御座います、女王様。」と私。

「可愛そうに、私を抱きたいのですね。」とエマ。

「抱かせて頂けるのなら何でも致します。」と私。

「それでは抱かせて上げましょう。その代わり生涯私の奴隷に成りなさい。」

「ありがとうございます、私は女王様の奴隷になります。」

その時エマの瞳が色味をました。

「ねえ、今すぐ抱いて・・」

 

北海道にいた時 私は喪失感で打ちひしがれていた・・

しかし今はエマに夢中になっている。

私は亡き妻に後ろめたさを感じながら、エマに呑み込まれていく。

 

静岡からはノンストップで明石海峡大橋まで走った。

世界最長のこの吊り橋は私は何度か通行しているのだが、エマは初めてなのでやたら感動している。

これから淡路島を通って鳴門海峡大橋から四国に渡り、さぬきから今治まで約300キロを一気に走り、今治のホテルで泊まる予定だ。そして次の日の早朝しらなみ海道を走る。しらなみ海道は島から島へと橋で繋いだ美しい橋の有る道だ。エマも楽しみにしているのだ。

 

私1人での車中泊とエマと2人での車中泊では、かなり状況が違ってくる。1人の時なら、お風呂は3日か4日に1度で良かったのだが、エマと一緒だとそうはいかない。

毎日愛し合うとなると、2日に1度はお風呂に入りたい。そうなると、どうしてもモーテル泊が増えてしまう。

それにバネットは2人では少し狭いのだ。天井も低いし長く居ると息苦しくなってくる。そんな分けで、モーテルかラブホに泊まることが多くなる。

 

旅館やホテルに比べるとモーテルやラブホは部屋貸なので、1人でも2人でも料金は同じだ。2人だと とてもコスパが良い。

今治での宿泊はモーテルではなくラブホにした。モーテルよりラブホの方がベッドが広く、浴槽も大きい。自動販売機もあって超快適なのだ。

 

お風呂から上りベッドに入ったが疲れているはずなのに、気持ちが高揚してなかなか眠れなかった。エマも同じらしく、これまでの話とか、これからの話など、取り留めもなくいつまでも話しをした。

 

無理に話さなくても良いけどさ、と前置きしてエマに聞いてみた。

「あのさあ、父親の性的虐待ってどういう事だったの?」

「性的虐待じゃあ無いかも、、嫌だって口では言ったけと、抵抗はしなかったんです。」

「いや、そういう事ではなくて、父親が子供とセックスすれば虐待なんだよ。」

「それは分かっているけど、きっかけは私が誘ったのかも、、」

「そうだとしても、虐待になるんだけどね。」

「うん、、、」

 

「お父さんとするのは嫌じゃあなかったんだね。」

「お母さんがお父さんと暮らし始めたのは中一の時だったから、私はお父さんだと思えなかったんよね。多分お父さんも私を子供だと思えなかったんだと思う。」

「中一じゃあ無理も無いなあ。」

「私ってお母さんとよく似ているんだよね。好きな食べ物とか、男の好みとか。 私の部屋は別だったけど、お母さんと父さんの息づかいが聞こえるんです、毎晩するんてすよ。お母さんを取られたみたいで寂しかったんだよね。私も抱いて欲しかったんだと思います。」

 

「お父さんのことが好きだったんだね。」

「お母さんには悪いって思っていたんです。お父さんも、もう止めようって言ってたんです。でも私は無理だった、、学校で虐められて、家に帰ると私だけ1人なんて、、」

 

なるほどと思った、母子で支え合って生きてきて、学校での虐めにも耐えられた。エマは母親の結婚で部屋も別になり、家でも1人になったのだ。

中一となれば性的な興味も出てくる頃だ。

「なるほどね、だからエマがお父さんを誘ったんだね。」と聞くと

「誘ったと言ってもね、お父さんは私に手を出さないと思ってたから、、だから安心して誘ったというか、、そこが微妙なんです。」

それは確かに微妙だ、エマは危ない綱渡りを楽しんでいたのかも知れない。

 

「今でも父さんのことが好きなの?」

「ううん!  今はパパが好き!パパだけだよ!」と無邪気に言う。

そして、、

「私の話ばかり聞いて、、私はパパの事を何にも知らないんだよ。スマホの待ち受けの綺麗な人は誰なの?気になるんだよね・・」と言った。

 

「ああ、スマホの写真ね・・あの人は、亡くなった俺の奥さんなんだ。」

「亡くなったの?じゃあパパはいま独身なの?指輪してるから結婚してるのかと思った。」

「結婚はしてたんだけど、今年の2月に妻がコロナで亡くなってね・・そろそろ指輪を外さないとな。」

「コロナだったんですか。奥さんの事、愛してたんですね。」

「うん、妻が亡くなって思い知らされたんだよ。どんなに妻を愛していたのかってね・・死んでから気がつくなんて皮肉なもんだよな。それで葬儀が終わってからさあ、俺、メンタルが壊れちゃってさあ・・鬱病みたいになってしまって・・」

「それで旅をしてたんですね・・」

「ああ、若いころ行った事のある北海道に行って山歩きをしてたんだけど、冬に追われて本州に逃れてね、流れ流れて埼玉のスーパーでエマと出会ったんだ。」

 

そこまで話すとエマが、私の頭を胸に抱える様に抱いた。

「パパ可哀想・・私 パパのこと愛しているからね、いっぱい愛してあげる。指輪は外さなくてもいいよ。気にしてないから・・」エマはそう言うと私の頭に頬ずりをした。

エマの優しさに包まれた私は、彼女の胸の中でなぜか急に目頭が熱くなり涙がこぼれた。エマを助けていたつもりだったのだが、違ったのかも知れないと思った。置き去りに怯えているのは私の方なのだと、そのとき私は悟ったのだった。

 

私は芦ノ湖経由で静岡に行き、京都から明石鳴門大橋を目指す計画を立てた。

明石からは四国に渡って徳島県を走り、今治から白波街道を通って尾道に行く。

そこから山口県の秋吉台を抜けて長門市に行き角島大橋に行こうという計画だ。

まずは芦ノ湖に行って風呂に入ろう。

 

車中泊もホームレスの様なものだが、私は家持だし、運転免許証や船舶免許などの身分を証明する物もある。それにそこそこ社会的信用度も高い。それを考えればエマのことで不審者扱いを受けることは無いだろう。

しかし、、本当にそうなんだろうか?

心配なので私はネットでググってみた。

 

彼女が17才なので純粋な付き合いなら、基本 恋愛として認められるようだ。

しかし、児童福祉法というのがあり、対価を伴う性愛は不正異性交友となりダメのようだ。対価とは金銭や物品が入るらしい。物品とは何が当てはまるのか?

もちろん児童とは18才未満を言う。

エマは後4ヶ月で児童を卒業だ。しかし純粋な恋愛って、どういうのを指すのだろうか?

 

芦ノ湖に着いたときには、寒波は過ぎていて暖かった。芦ノ湖には1500円ほどで温泉が利用できる旅館がある。そこでノンビリ温泉に浸かってからキャンプ場に行ったのだが、平日なのでキャンプ場は空いていた。

ここは冬期はキャンプサイトが1000円で借りられる。私は予約して置いたキャンプサイトに車を停めるた。明日はタープでも張りキャンプ気分でゆっくり過ごそう。

エマがカーテンを閉めてベッドを組立てる。「飯が先だろ!」と私が言うと「ううん、私が先よ、、」と言って笑う。あれからというもの、エマは毎日私を誘ってくる。私を逃さない為なのか、それともセックスが好きなだけなのか、、よくわからない。

 

セックスの後、エマが冗談を言う。

「パパは私を拉致して毎日犯してるんだからね。私を捨てたら通報するよ!」

「あのさあ、その冗談 、マジ 怖いんだけど・・」と私が言うと、エマはふふと笑って私に言った。

「冗談なんかじゃないよ、置いて行ったらマジ通報するよ!」と言う。

気持ちは分かるが、強迫めいた言い方が気に触る。

 

「ああ、正直言うと俺も不安なんだ。朝起きたら財布とか持って、エマが消えてるって、、そういうのも、無いとは言えないだろう?」と私が冗談ぽくそう返すと、

「それは絶対無いです!  私はパパを失ったら全部無くなるんです。話しをする人も、心配してくれる人も。私が逃げるなんて、そんなの絶対ありえない!」と怒ったように言う。

「分かってるって!  あるある話をしただけだから、怒らないで、、」と言うと、

「べつに怒ってないけど!」とすねたように言う。

 

私はなだめるように、

「大丈夫だから、置いて行かないから、俺はエマが好きなんだ。もう信じてくれよ、な!エマ。」私がそう言うと

「ごめんね。不安なだけだから・・・ 」とエマが言った。

 

エマの不安は私が原因だ。

私はエマとの関係に後ろめたさを感じている。エマの年齢の事だけでは無い。妻への裏切りになるような気がして気が重いのだ。

敏感なエマはそれに感ずいているのだろう。

 

いまさら道徳がどうとか年がどうとか言ってもしょうが無い。エマは誰かの救いを求めていたのだし、私だって誰かの救いが必要だったのだ。それなのにいつまでもはっきりしない私をエマは遠回しに責めているのだ。

「俺はエマが必要なんだ。好きにならずにいられないんだ。」

私がそう言うと

「そうだよね、私もパパの事を好きになるしかなかったんだよ・・」とエマが納得したようにうなずいた。

「そうなんだよ、お互いに他の選択肢は無かったんだよ。」私は自分を納得させるようにそう言った。

 

「昔ね、好きにならずにいられない、そんなタイトルの歌を聞いた事があるよ。」

「ほんとうに?誰の歌?」とエマが言う。

「誰だったっけ、、」私はスマホを取り出して検索をする。エルビスプレスリーのCan't Help Falling In Loveがyoutubeでヒットした。

私はエルビスの動画をタップした。

 

Wise men say only fools rush in

But I can't help falling in love with you

Shall I stay, would it be a sin

If I can't help falling in love with you?

古く懐かしい歌がスマホからながれてきた。

私の中学生英語でもじゅうぶん解る歌だ。

「なんかいいメロディだね、どんな意味なの?」とエマが聞いた。

「賢い人は言う 飛び込むのは愚かだと

でも僕は君を  愛さずにはいられない

これは罪深いことなのだろうか

僕が君を  愛さずにはいられないのは?」

 

私はだいたいの意味をエマに教えた。

「なんか私たちの事みたいだね」とエマが言った。」

「そうだな、いろんなしがらみを引きちぎって、二人で飛び込んでしまうか・・」

そう私が言うと、エマが

「私はもう飛び込んでるよ。」と言った。

エルビスの歌を聴いているといろいろな思いが去来して私の目から涙が溢れた。

「パパ泣いてるよ。」そう言いながらエマも涙ぐんでいた。