前回からの続きで、エリコをご紹介していきます。

エリコは旧新約聖書、どちらにも登場するとても重要な町の一つです。前回はテルエリコをはじめとする旧約聖書の時代を中心にご案内しましたが、今回は2000年前の新約聖書の時代のエリコを紹介していきます。
町の中心街を通り抜ける際、柵の中に大きな樹木が見られます。「ザアカイの木」と呼ばれている、いちじく桑の木です。

遠くから見ても、大樹と分かるような木ですが、現在はロシア正教会の庭の一部になっていて、教会が管理しています。

ザアカイの木は、新約聖書に登場する人物の名前からその名前が付けられました。

“さて、イエスはエリコにはいって、その町をお通りになった。ところが、そこにザアカイという名の人がいた。この人は取税人のかしらで、金持であった。彼は、イエスがどんな人か見たいと思っていたが、背が低かったので、群衆にさえぎられて見ることができなかった。それでイエスを見るために、前の方に走って行って、いちじく桑の木に登った。”

こう記されています。

その時の様子が詳しく書かれていて、ザアカイという人がどんな人物であったのか、背丈のことまで記されています。

現在エリコの町の中にある木は、2000年もの樹齢はありませんが、町の大きな通り沿いにあり、聖書の記述のような大きな木です。こんな木に登れば、群衆の頭越しにイエスの一行も簡単に見ることができたのではないか、と当時を彷彿とさせてくれます。

柵で囲われて保護されていることもあって、実際に登ったり、触ることは出来ませんが、木登りが得意な人であればすぐに登れてしまう感じですね。

 

今ではエリコの町の外れとなるあたりに、2000年前の遺跡があります。ヘロデ大王の冬の宮殿です。

観光地として整備されていないので、滅多に訪問することはありませんが、イエスキリストが誕生した後、ヘロデ大王はこの宮殿で亡くなり、エルサレム郊外のヘロデオンに葬られました。

(ヘロデの宮殿 プール跡)

 紀元前4年ごろ、ヘロデはエリコでその生涯を閉じ、エリコからヘロディオンに8スタディオン葬列が進んで、そこに彼は葬られた”(ユダヤ戦記第1巻33章9節)

カイザリヤという当時最大の港町をはじめ、エルサレム神殿、セバスティア、マサダ、マケラス、ヘロデオンなどなど、数多くの町や要塞などを建てたヘロデ大王もその最期は孤独だったと記されています。

 

話題をガラッと変えて、前回ご案内したエリコの遺跡のすぐ近くに、よく立ち寄るレストランがあります。

名前は「テンプテーション」です。これは近くに「誘惑(テンプテーション)の山」があるためですが、このレストランでよく誘惑に負けて食べ過ぎてしまうことがしばしばあります。

このレストランの名物料理と言えば、ケバブにラムチョップです。あとは前菜の数々です。

(ラムチョップと中東料理)

(ケバブ 串焼き)

(クナフェ)

中東では欠かすことができない、デザートの一つがクナフェです。特にテンプテーションのクナフェはとりわけ美味しく、甘さとチーズの絶妙な組み合わせがなんとも言えません。おかわりすること、間違いなし。

トルココーヒーと抜群に合います!

 
最後におまけですが、看板娘ならず、お店の看板ウェイターのワリード氏を紹介します。
彼とは個人的にも30年来の付き合いですが、毎回いろいろとサービスしてくれます。そんな彼はとても顔が広く、すぐにいろんな人とも仲良くなるのですが、ちょっとお調子者の一面も。数年前に訪れた際には「俺は誰かに似ているだろう?」とドヤ顔で質問してきました。何を言ってほしいのか、すぐに理解しましたが、自分でそのことを尋ねてきてニヤッとする、そんなとても愛嬌のある人柄です。その似ている人物とは、当時の某国大統領ですが。まあ、確かに似ているかもしれませんね。

ちなみに、サービス精神がとても旺盛で、そのおもてなしは素晴らしいです。

ここのレストランはパレスチナ自治区のエリコ内にあるので、イスラエルでは珍しいパレスチナ産のビール、タイベを飲むことができます。

なるべく誘惑(テンプテーション)されることなく、ほどほどに飲んでみてください。