シャローム!

マーニシュマ?(お元気ですか?)

 

イスラエルは、雨季が終わり、冬時間から夏時間に変わりました。

私が住むテルアビブでは、日中30度を超えるようになり、太陽の日差しが強く、いよいよ長い夏が始まります。

ここは春を飛び越えて夏になるんですね。

 

今回は、ペサハの話をします。

今年は4月15日の日没から22日の日没前までがペサハの期間になります。

ペサハとは、日本語で「過越しの祭」英語で「Pass over」と言い、スコット(仮庵の祭)、シャブオット(七週の祭)に並ぶ、ユダヤ教の三大祭の一つです。

モーセが、エジプトで奴隷だったユダヤ人を引き連れてエジプトを脱出したこと(出エジプト)を記憶し、祝うお祭りです。

 

「過越し」の意味…出エジプト記に記されていますが、神様がエジプトにもたらした10番目の災いで、エジプトの国にいる全ての長子を殺すことを決めました。ユダヤの民は子羊を屠り、血を戸口に塗るように言われました。そして真夜中に神様が全ての長子を打つとき、入口の血が印となってユダヤの民の家を災いが過ぎ越していったことから、「過越しの祭」と呼ばれます。(出エジプト記 11章~12章)

 

1.特別な祝宴「セデル」

ペサハの前日夕方からはセデルという、特別な祝宴が開かれます。

出エジプト記を読み返し、ハガダーという出エジプトの物語や歌、祈りなどが書かれている冊子を読み、まるで自分がその歴史を体験したようにペサハをお祝いします。

 

<2021年ペサハ前に新聞と一緒に配られたハガダー>

 

 

またセデルで必ず食べるものがあります。

・3枚のマッツァ…エジプトを出るときに持って行った種無しパン

・苦菜…先祖がエジプトの奴隷として苦く辛い生活

・ズロア(肉)…子羊を屠って血を戸口に塗り朝までに食べ切ったこと

・ゆで卵…茹でれば茹でるほど固くなるゆで卵のように、困難にあえばあうほどユダヤの民の結束が増すこと

・ハロセット…奴隷の時に作っていたレンガ

・カルパス…エジプトで殺された子どもたちと厳しい労働のために流した涙

以上の6つをそれぞれ記憶するために食べます。

 

<セデルの様子>

 

子どもたちも出エジプトをお祝いする特別な夜だということを覚えるため、一緒に過ごします。セデルはとても長い時間おこなうため、子どもたちが退屈しないように、“アフィコマン”という宝探しゲームを行います。

3枚のマッツァのうち、二枚はセデルの最中に食べますが、残りの一枚はお父さんが家のどこかに隠します。セデルの最後まで一緒に食卓に座り、なおかつその隠されたマッツァを探して、見つけた人がプレゼントをもらえる、というゲームです。

 

<アフィコマン>

 

2.別名は種無しパンの祭

ペサハといえば、種無しパン、マッツァを食べる期間として有名です。3月下旬からスーパーマーケットで大きな箱で売っています。パンというより、クラッカーに近いです。

なぜ種無しパンではないといけないのでしょう。

 

王の命令で、エジプトから出ていくように命じられたモーセとユダヤの民は、その晩に出発するために、旅の準備を急ぎました。旅の途中で食べるパンも、発酵させる時間が足りなかったので、種無しパンを焼きました。

これを記憶するために、マッツァを食べるのですが、種無し=無酵母なので、酵母(イースト菌)を含むものは全て食べられないのです!なので、パン売り場には布がかけられ、パン種とされる小麦粉や小麦製品はお店からなくなり、もちろんビールもありません。

 

私たちのような異邦人は、事前に小麦粉やパンを大量買いしてペサハに備えます。そうそう、ビールも先に買っておかねばなりませんね!

万が一買い忘れても、ロシア系のスーパーマーケットなどペサハ期間にも買える場所はあるので、ご心配なく。

マッツァに飽きてくると、近くのアラブ人の町のレストランに行く人もいます。

パンを作れない、となると、巷のハンバーガーショップはどうなるのでしょうか。

マッツァでトマトやチーズをはさむのでしょうか?

いえいえ、パンのように見える種無しパンを使ってバーガーを作っています。

 

<種なしパンのハンバーガー(某ハンバーガー店)>

 

触感は少々パサついていますが、ペサハの期間だけの特別バーガーと考えたら食べる価値ありです!

 

さらに、無酵母になるのはお店だけではありません。それぞれ家の中にも酵母菌を残しておかないようにするため、大掃除をしたり、家の壁を塗り直したりします。そのため、お店には掃除道具がたくさん売られているのも目にします。まるで日本の年末の大掃除と似た感覚です。

 

 

今年は、コロナで閉鎖されていた過去2年間とは違って、ペサハ休みを利用して海外旅行へ行く人が多いようです。中東やヨーロッパもコロナによる規制が少なくなりました。イスラエルも観光バスが走り、観光客をたくさん見かけるようになりました。今回のペサハは、コロナを「過ぎ越し」たこともお祝いしたいですね。

 

ペサハ・サメアフ!(ペサハおめでとう)