今回も「国境の島」対馬の魅力をたっぷりとご紹介いたします。

 

対馬の西側に小茂田浜(こもだはま)という浜があります。ひっそりとした浜ですが、毎年11月のお祭りには賑やかになります。「鳴弦の儀(めいげんのぎ)」というお祭りで、弓矢を持った武士の装束をした人が、「この島を襲う者は容赦せぬ」と叫んで海に向かって矢を射るのです。


今回は、このお祭りにまつわるお話から始めたいと思います。

(小茂田浜 鳴玄の儀)

 

鎌倉時代、小茂田浜の海は蒙古軍の船で埋め尽くされてしまいました。その数、3万とも4万とも言われています。そのうち1000人余りが浜に上陸してきました。世に言う「元寇・文永の役(1274年)」です。

対馬の宋家の当主 宋助国(そうすけくに)は、知らせを聞き、島の東側の厳原(いづはら)から80騎あまりで小茂田浜に向かいました。夜のことです。宋助国は68歳。当時で言えばかなりの高齢者ですが、照明もない真っ暗な中、曲がりくねった細い山道を一気に駆け抜けます。浜に一行が到着するやいなや、蒙古軍が一斉に弓矢を射かけてきました。それを迎え撃ち、壮烈な戦いの果てに宋助国の兵は全滅します。

その後、蒙古軍は、隣の島壱岐(いき)を制圧して、博多へも攻めていきます。しかし、日本軍の身をかえりみない戦いに恐れをなし、またそこへ大風が吹き、船が次々と沈没していきました。そして命からがら自国へ帰っていったのです。

この元寇の様子が描かれた「アンゴルモア~元寇合戦記~」という漫画が、最近TVアニメ化されました。私は知らなかったのですが、対馬ではかなり有名です。あちらこちらにポスターが貼ってありました。

今ではトンネルができて、厳原から小茂田浜まで山道を通らずに車で15分ほどで行けるようになりました。当時の道もそのまま残っていますが、かなり曲がりくねった急な山道なのであまりおすすめできません。

 


さて、次のお話は安土桃山時代へと飛びます。対馬は山が多く耕地が少ないために、代々朝鮮半島との交易に力を注いできました。

宋家の19代当主(20代とも言われる)宋義智(そうよしとし)の時に、豊臣秀吉から朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の命を受けました。義智は、キリシタン大名小西行長の配下としてその任に当たります。

秀吉は朝鮮国の国王に、日本の属国になるように要求します。義智は、明国の属国である朝鮮がその要求にこたえるはずもないことがよくわかっていました。しかし、秀吉の命令は絶対です。日本と朝鮮の間で板挟みになり苦悶します。

そうした中、小西行長と義智の親交も深まっていきました。朝鮮出兵へ同行したこの二人はいつも一緒に行動していたと言います。そして小西行長は、娘マリアを義智へ嫁がせるのです。マリアはわずか15歳でした。

始まりは政略結婚だったかもしれませんが、二人は次第に理解しあい、深く信頼しあうようになります。そして義智は、義父や妻の影響を受けて洗礼を受けキリシタンになりました。洗礼名はダリオ。

朝鮮の日本軍を慰問したグレゴリオ・デ・セスペデス神父は義智と出会い、「極めて慎み深い若者で、学識があり、立派な性格の持ち主」と評しています。

 

関ケ原の戦いで西軍が破れ、小西行長は斬首されました。戦に勝った東軍の徳川家康は、今後の朝鮮半島との交易などを考え、宋家には処罰を与えず義智を初代の藩主に任命します。義智は、藩内に累が及ばないように悩んだ末、妻マリアを離縁しました。マリアは幼い息子(後の小西マンショ)を連れて泣く泣く長崎の修道院に逃れ、数年後に亡くなったと言われています。


けれども不思議なことに、対馬の厳原(いずはら)にマリアを祭神として祭っている神社があります。「今宮若宮神社」です。境内の案内の掲示板に「祭神 小西夫人マリア」と書いてあります。マリアの魂を鎮めるために建てられました。神社の祭神がキリシタンというのはとても珍しく、ここに至るまでのことをあれこれ想像すると感慨深いものがあります。

対馬南端の豆酘(つつ)には、イエスや、イエスの母マリアと呼ばれる石像なども残っており、隠れキリシタンが多数いたと考えられています。

 

ちなみに母と一緒に長崎へ逃れた小西マンショは、その後、長崎からマカオに渡り、そこで天正遣欧少年使節団の一員原マルティノの支援を受け、ポルトガルからローマへ行き、そこで神学を学び司祭となりました。そして禁教の日本に帰ってきて12年もの間、飛騨高山で布教していました。1644年に捕縛されて殉教しています。

 

この宋家の物語を実に興味深く、かつわかりやすく話してくださるガイドさん達がおられます。地元のガイドグループ「やんこも」さんです。弊社のツアーでも名物ガイドさんのお話しがたっぷり聞けると思います。

 

最後に食べ物のお話を少し。対馬の名産はあなご。水揚げ高は日本一だそうです。新鮮なアナゴのお刺身も対馬ならでは。豊富な魚介類とともにアナゴ尽くしもぜひ味わっていただきたいものの一つです。

また朝鮮半島との長い間の交流のため、韓国風なタレで豚肉を炒め、ごはんにのせて食べる「とんちゃんどんぶり」なども見逃せない一品です。

まだまだ魅力いっぱいの対馬をご一緒できたら嬉しいです。