Here Today徹底分析(3) | 音楽研究者 藤野純也のブログ:てるむじか

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前回はHere Todayの冒頭[A]がその調性がKey of G、メジャーキーでありながら、「メジャー感」を隠蔽する構造になっていることを解説しました。 今回は[A]のコード進行を歌詞と関連づけて考察しましょう。冒頭部は2つの変格終止で枠組みが構成されているため、便宜上歌詞を前半と後半にわけます。 

【前半】
 [C#m7 CM7 G (変格終止)] 

And if I say I really knew you well, what would your answer be? 

(君のことはなんでも知ってた、僕がそう言うと、君はなんて答えるだろう)

 

 冒頭では「僕」の問いかけに対して「君」がどんな返答をするのか、仮定法で、想いが回らされます。しかし後に出てくるif節でわかるように、その回答は実際には得られないものです。そのため、冒頭のテクストにはある種の「祈り」に似たニュアンスがあり、変格終止のサウンドがそれを表現しています。また冒頭の"If I say"にC#m7-5の不協和なサウンドが重なることで悲痛な思いが表現されています。 

【後半】
 [Em Cm G(サブドミナントマイナー終止[変格終止])]
 If you were here today Ooh ooh ooh, here today
(君がいまここにいれば、あぁ、いまここに)

 後半Emのサウンドがなり響く箇所で"if you were here today"と「君」はもうここにはいないということが歌われます。 楽曲分析上はEmはKey of GのVIと解釈するのが自然でしょう。しかしここまでの間Key of Gを確定させるV-Iの進行がでていないため、VIのサウンドは Key of EmのIに近いマイナー感をもって響きます。  

 その直後、マイナーの変格終止にのせて、Gmスケールで下降する「嘆きの旋律」が歌われます。 このように歌詞とコード進行を対応させて考察すると、前半は C-Gの変格終止による祈り、後半は Cm-Gの変格終止による嘆きの組み合わせで構成されていることがわかります。 いずれにせよ[A]は全体的にどんよりとした「影」が立ち込めていると言えるでしょう。
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