Here, There and Everywhereの分析 | 音楽研究者 藤野純也のブログ:てるむじか

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【形式】

"to lead a better life I need my love to be here"

を序奏と解釈すると、序奏とコーダ付きのA-B-Aの三部形式として理解できる。ビートルズの曲の形式の大半は3部形式なので、やっぱりヨーロッパのバンドなんだなと思う。

 

【序奏の和声分析】

|G Bm |Bb |Am D7 ||

 

調性はKey of G。

2小節目のノンダイアトニックコードBbのサウンドが特徴的。 このコードをbIII、すなわちビートルズの楽曲に頻出する準固有和音(同主調からの借用)として理解することも可能であるが、前後の流れから、むしろ 後続するII,Amに向かう 代理ドミナント、いわゆる裏コードだと解釈するのが妥当だろう。Bbを抜くと骨格は I-III-II-Vととてもシンプルなだけに2小節目のBbが効いている。

このBbのサウンドはあとにくる[B]の展開の予告としての機能を果たしており、このあたりのセンスは少々クラシック的。

【[A]の和声分析】

||:G Am |Bm C|G Am |Bm C|F#m7 B7 |F#m7 B7|Em Am |Am D7:||

 

最初の4つコード G Am Bm C は Key of Gのダイアトニックコードの平行移動。 両端が IとIVなので,T-Sが骨格になっている。

同じ進行が2回繰り返されたあと |F#m7 B7|の進行が2回連続して現れるがこれは後続するEmの仮の主和音として見立てたときの II-Vの進行。すなわち平行調Key of Emからの借用である。

 

このマイナーになる直前、Bmのコードの部分からのメロディの変化のさせ方がっとてもうまい。

1回目は B D A G C E D と印象的な跳躍を行なっているが

2回目はB C D Eと順次進行させることでうまくブレーキをかけている。

 

その後もう一段下がってG A Bと順次進行をするが、F#m7のコードの部分で歌われるBが11thの音であることも注目しなければならない。このことで該当箇所に適度な緊張感を加味することに成功している。

 

なお。F#m7は Eメロディックマイナーのダイアトニックコード。Yesterdayにも見られるがポールはマイナーのII-VにおけるIIを m7-5ではなく、m7にすることが多い。そのあたりもポールの作品が「ヨーロッパっぽい」理由かもしれない。

【[B]の和声分析】

Bb Gm |Cm D7|Gm |Cm D7||

[B]で調性は同主調、Key of Gmに転調する。

ただし冒頭和音がKey of GmにおけるIII のBbからはじまるため、サウンドは明るく感じられる。

序奏におけるBbはこの[B]の最初のBbを予告していたのである。

[B]はたった4小節で終わる、Bbから始まることで意表をつかれるが、その後は I IV V を2回繰り返すだけのシンプルなもの。

 

【コーダの分析】

コーダのコードは[A]のはじめの4小節とまったくおなじであるが、メロディが4小節目のCが鳴り響くタイミングで終止するため、メロディが主音(G)で終わっているにも関わらず終止感が希薄に感じられる。

ためしにコーダのラスト2小節のメロディを D音を3拍のばしF#音を1拍、そしてGのコードにあわせて、G音で終止するように改変して歌ってみてほしい。曲の余韻が驚くほど台無しになる。ポールはこのあたりのセンスが非常によろしい。